「いつ」「どこ」が、買わせる
朝のあなたと、夜のあなたは別の客
同じ人でも、買うものは、時間帯で変わる。
朝のコンビニでは、コーヒーとおにぎり。夜の同じ店では、お酒とつまみ。
家にいるときと、出先にいるときでも、欲しいものは違う。
「誰か」だけでなく、「いつ・どこにいるか」で、人は別の客になる。
同じ一人の人間が、時間と場所によって、まったく違う財布を持つ。この「時間」と「場所」こそ、購買を動かす、強力な文脈だ。
「30代男性」という属性だけでは、何も分からない。その人が「平日の朝、駅にいる」のか「週末の夜、家にいる」のかで、売るべきものは、まるで違ってくる。
USJが、来場者の「今」に合わせる
場所と時間を巧みに使った例として、テーマパークの施策が、よく挙げられる。
ある報道によれば、USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)では、来場者が今いる場所と時間帯に合わせて、情報を出し分けているという。
- 朝、入口付近にいる来場者 → グッズをおすすめする(これから一日、楽しむ文脈)
- 帰る時間、土産コーナー付近の来場者 → お土産をおすすめする(持ち帰る文脈)
同じ人に、同じグッズを、一日中見せ続けても、響かない。
朝に「お土産はいかが」と言われても、まだ早い。帰り際に「Tシャツを着て遊ぼう」と言われても、もう遅い。
「今、その人が置かれている文脈」に合うものを出すから、刺さる。これが、場所と時間を使う、ということだ。
「同じ提案」でも、タイミングで結果が変わる
ここで強調したいのは、提案の中身が同じでも、タイミング次第で、成果がまるで変わる、ということだ。
たとえば「飲み物はいかがですか」という一言。
炎天下を歩いてきて、店に入った直後の客には、刺さる。喉が渇いているからだ。
でも、食事を終えて、お腹いっぱいの客には、響かない。同じ言葉、同じ商品なのに、だ。
つまり、売れない理由は、商品が悪いからとは限らない。「言うタイミングが、ずれている」だけのことが、とても多い。中身を変える前に、出すタイミングを見直す。それだけで、同じ商品が、急に売れ始めることがある。
位置情報マーケティングの考え方
スマートフォンの普及で、「お客さんが、今どこにいるか」を前提にした施策が、広がっている。これを、位置情報マーケティングと呼ぶ。
代表的な使い方を、整理すると、こうなる。
- 店の近くを通った → クーポンを通知し、来店を促す
- 来店時間帯の傾向 → 昼に来る客に、ランチ限定割引を出す
- 滞在時間が短い客 → 滞在を延ばすクーポンを出す
- 競合店の近くにいる → 自店への来店動機を提示する
共通するのは、「その人が、今いる状況」に合わせて、出すものを変えるという発想だ。
かつては、不特定多数に、同じチラシを配るしかなかった。今は、店の前を通った人にだけ、その瞬間にクーポンを届けられる。文脈の解像度が、けた違いに上がっている。
文脈は「組み合わせ」で精度が上がる
時間、場所、そして前回の天気。これらは、単独でも効くが、組み合わせると、さらに精度が上がる。
- 「平日の・昼に・店の近くにいる」客 → ランチ需要が高い
- 「週末の・夕方に・雨が降っている」客 → 出前・宅配の需要が高い
一つの文脈だけだと、まだ大雑把だ。「昼」だけでは、誰が何を欲しいか、分からない。
でも、「平日の・昼・オフィス街・晴れ」と、複数の文脈が重なると、その人が今、何を欲しているかの解像度が、一気に上がる。外でランチを買いたい人だ、と絞り込める。
「誰に売るか」というターゲティングから、「どんな状況の人に売るか」へ。マーケティングの軸は、人そのものから、人が置かれた文脈へと、移りつつある。
まとめ:3つの洞察
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同じ人でも、時間と場所で「別の客」になる
- 朝と夜、家と出先で、欲しいものは変わる。属性より、時間と場所のほうが、何を売るべきかを教えてくれる
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中身が同じでも、タイミングで結果が変わる
- 「飲み物はいかが」は、喉が渇いた客に刺さり、満腹の客には響かない。売れない原因は、タイミングのずれかもしれない
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文脈は組み合わせると精度が上がる
- 時間×場所×天気。複数が重なると「今、何が欲しいか」の解像度が上がる。軸は、人から文脈へ
次回予告
「個人情報を集めなくても、人に刺さる広告は作れる。」
次回は、プライバシー時代の本命、コンテクスチュアル広告について。なぜ「あなたを追跡しない」手法が、再注目されているのか。
💬 時間や場所で「つい買ってしまった」経験はありますか?コメントで教えてください。