現場に行かないAI導入は、なぜ外すのか
「理想の業務フロー」は、たいてい実在しない
AI導入の設計を、会議室だけで済ませようとする会社は多い。
資料を眺め、あるべき姿を描き、その理想に沿ってツールを組む。
ところが、その理想の業務フローは、現場に存在しない。
紙に書けるほど、現場はきれいに動いていない。例外があり、慣習があり、「なぜかそうしている」手順がある。そこを見ずに描いた設計は、ほぼ的を外す。
半年の設計が、現場の一言で崩れる
ある在庫管理の現場で、こんなことが起きた。
管理部門が、半年をかけてピッキングの新しい仕組みを設計した。理屈のうえでは、よくできていた。
だが現場に持ち込むと、一つの手順が、同じ商品を10回以上も取りに行く動きを要求していた。机上では気づけない、動線の無駄だった。
そこで初めて現場に入り、実際の動きを観察した。すると本質的な原因が見え、設計は元の3分の1以下にまで簡素化できた。
半年かけた理想より、一日の観察のほうが、正解に近かった。
聞くべきは「理想」でなく「今」
現場ヒアリングで、多くの人が質問を間違える。
「理想の状態は」と聞いてしまう。すると相手も、きれいごとを答える。そこからは、実態が出てこない。
聞くべきは、こうだ。
- 今、実際にどういう手順で動いているか
- どこで手が止まるか、どこでイライラするか
- なぜ、その面倒なやり方を続けているのか
理想ではなく、今の不便を語ってもらう。改善の種は、いつもそこに埋まっている。
業務を因数分解し、AIで解ける部分を切り出す
現場の実態が見えたら、次は分解だ。
一つの業務を、小さな作業の粒に分ける。そのうえで、こう仕分ける。
- AIが得意(繰り返し、転記、要約、分類)→ 任せる
- 人が判断すべき(例外対応、最終確認、責任の伴う決定)→ 残す
「業務まるごと自動化」ではなく、分解して、解ける部分だけAIに渡す。この順番を守るほど、導入は現実に着地する。
丸ごと置き換えようとするから、無理が出る。因数分解が、地に足のついたAI導入の入り口だ。
まとめ:3つの洞察
-
理想の業務フローは実在しない
- 現場は紙のようにきれいには動いていない。例外と慣習を見ずに描いた設計は、的を外す
-
聞くのは「理想」でなく「今の不便」
- どこで手が止まるか、なぜ面倒なやり方を続けているか。実態の中に、改善の種が埋まっている
-
因数分解して、解ける部分だけ渡す
- 業務まるごとではなく、小さな作業に分け、AIが得意な粒だけを任せる。判断は人に残す
次回予告
現場を見て、正しく設計した。それでも、運用に乗らなければ意味がない。
最終回は、壊れないAI導入は何が違うのか。作って終わりにせず、運用に乗せ続ける仕組みを、シリーズの答えとして示す。
💬 あなたの職場に、「なぜか続いている面倒な手順」はありませんか?