AI導入は「業務の棚卸し」から始まる ─ 現場を因数分解する
「AIで何ができる?」は、問いの立て方が逆
AIを入れたいと思ったとき、多くの人はツールから調べ始める。何ができるのか、どの製品が優れているのか。
でも、この順番だと迷子になる。道具の機能は無数にあり、自社のどこに効くのかが見えないからだ。
正しい順番は、逆だ。まず自分の業務を分解し、そこから「AIで解ける部分」を探す。
シンプルとは、複雑なものを削ることではない。観察し、因数分解し、再構築することだ。AI導入も同じで、現場をよく見て、細かく割ってから、組み直す。
一つの業務を、工程に割る
因数分解の対象は、「大きな仕事」ではなく「一つの具体的な業務」だ。
たとえば「見積書を作る」という業務を、工程に割ってみる。
- 過去の類似案件を探す
- 必要な項目を転記する
- 単価を調べて計算する
- 体裁を整える
- 内容が妥当か確認する
- 承認を得る
一つの業務に見えていたものが、6つの工程に分かれた。ここまで割ると、見え方が変わる。
**「見積作成にAIは使えるか」ではなく、「どの工程にAIが効くか」**という、答えられる問いに変わるのだ。
各工程を、2種類に仕分ける
割った工程を、たった2つのラベルで仕分ける。
反復系 ─ 決まった手順の繰り返し。探す、転記する、計算する、整える。ここはAIが得意だ。
判断系 ─ 良し悪しや妥当性を決める。確認する、承認する。ここは人間が担う。
先ほどの見積作成なら、こう分かれる。
- 過去案件を探す → 反復系(AI候補)
- 項目を転記する → 反復系(AI候補)
- 単価を計算する → 反復系(AI候補)
- 体裁を整える → 反復系(AI候補)
- 内容の妥当性確認 → 判断系(人)
- 承認 → 判断系(人)
6工程のうち4つが、AIで軽くできる候補になった。全部を任せる必要はない。流れの中の一部を軽くするだけで、全体は確実に速くなる。
棚卸しは、機能から入らない
この作業のコツは、ツールの機能を一切見ずに進めることだ。
機能から入ると、「この機能で何ができるか」に思考が引っ張られ、現場の実態からズレる。だから順番はあくまで、現場を割る → 反復と判断に分ける → 反復系にだけ道具を当てる。
紙とペンでいい。自分が今週やった業務を一つ選び、工程に割り、反復か判断かを書き込む。それだけで、AIを当てるべき場所が具体的に浮かび上がる。
派手な分析ツールはいらない。必要なのは、自分の仕事を他人の目で観察する姿勢だけだ。
まとめ:3つの洞察
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ツールより先に、業務を分解する
- 「AIで何ができるか」ではなく「自分の業務のどこに効くか」から入る。問いの順番を逆にする
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一つの業務を工程に割る
- 曖昧な「大きな仕事」のままでは判断できない。6つ前後の工程に割ると、答えられる問いに変わる
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反復系と判断系に仕分ける
- 探す・転記・計算・整えるはAI候補、確認・承認は人。全部でなく、一部を軽くするだけで全体が速くなる
次回予告
棚卸しでAI候補の工程が見えた。では、そこに何を期待するか。
次回は、最初の一歩で狙うべきゴールの話だ。いきなり「人の置き換え」を目指すと折れる。まず狙うのは、もっと小さくて確実な成果である。
💬 あなたの担当業務を一つ、工程に割ってみると、いくつの工程に分かれそうですか?コメントで教えてください。