第7回: 未来への問い ─ 私の選択
これが最終回だ。
5つの革命を振り返り、3人の哲学者に学んだ。
最後に、私自身の話をしたい。
私の現在地
37歳。マレーシア在住。
株式会社PandaOfficeの代表。
プロジェクトマネジメント、5Gインフラ設計、AIを使った業務改善。
これが今の私だ。
5つの革命を振り返る
農耕革命。人類は「未来」を手に入れた。同時に「不平等」を手に入れた。
印刷革命。人類は「知識」を手に入れた。同時に「フェイク」を手に入れた。
産業革命。人類は「効率」を手に入れた。同時に「時間を売る」構造を手に入れた。
情報革命。人類は「接続」を手に入れた。同時に「孤独」を手に入れた。
AI革命。人類は「思考の代行」を手に入れようとしている。何を失うのか。
私は、この問いに答えを持っていない。
しかし、私なりの「選択」はある。
私の選択
第一に、「問い」を持ち続ける。
ソクラテスは「無知の知」を説いた。分からないことを分かっていること。これが知恵の始まりだ。
私は19歳から、現場で「なぜ」を問い続けてきた。この習慣を、AIが来ても続ける。
第二に、「変化」に抵抗しない。
老子は「柔よく剛を制す」と言った。硬いものは折れる。柔らかいものは曲がって生き残る。
私はマレーシアに移住した。日本に固執しなかった。AIも同じだ。抵抗するより、使いこなす。
第三に、「制御できること」に集中する。
エピクテトスは「二分法」を説いた。制御できることと、制御できないこと。
AIが社会をどう変えるかは、制御できない。しかし、自分がAIをどう使うかは、制御できる。私は後者に集中する。
変わらなかったこと
5つの革命で変わらなかったこと。
承認を求める。安心を求める。意味を求める。愛を求める。死を恐れる。
2500年前のソクラテスも、19歳の私も、37歳の私も、同じことで悩んでいる。
技術がどれだけ進んでも、人間の欲求は変わらない。
これが本連載で最も伝えたかったことだ。
未来予測はしない
「AI時代はこうなる」
こういう予測は無意味だ。
産業革命のとき、誰がインターネットを予測できたか。情報革命のとき、誰がChatGPTを予測できたか。
未来は予測できない。
しかし、「人間は変わらない」という前提に立てば、見えてくるものがある。
どんな技術が来ても、人間は「認められたい」「安心したい」「意味がほしい」と思う。
これを満たす仕事は、なくならない。これを満たせる人間は、生き残る。
私の出口
私の「出口」を書く。
- 「成果」で勝負する。
第4回で書いた。「時間を売る」仕事は減る。「成果を売る」仕事が残る。私は33歳で独立した。時間ではなく、成果で評価される世界を選んだ。
- 「判断」を磨く。
AIは情報を処理できる。しかし、判断はできない。「この状況で、何を優先すべきか」。この判断力は、現場で培われる。AIでは代替できない。
- 「繋がり」を深める。
第5回で書いた。「接続」と「繋がり」は違う。1万人のフォロワーより、1人の理解者。私はマレーシアで、家族との繋がりを深めている。
- 「問い」を立てる。
第6回で書いた。AIは「答え」を出す。人間は「問い」を立てる。良い問いを立てられる限り、人間はAIに代替されない。
結び
私は19歳で現場に出た。
通信工事。基地局点検。マニュアルにないトラブル。
そこで学んだことは、「観察すれば理解できる」「判断する力が価値になる」だった。
25歳で年商2億円のプロジェクトを回した。
そこで学んだことは、「信用は相手の時間を買うこと」「組織は正しさより順序を重視する」だった。
33歳で独立した。
そこで学んだことは、「時間ではなく成果で評価される世界がある」だった。
37歳、マレーシアにいる。
そこで学んでいることは、「繋がらない自由」と「問い続ける価値」だ。
技術は変わった。社会も変わった。
しかし、私が学んだことの本質は、変わっていない。
人間は変わらない。だから、歴史から学べる。
これが、本連載の結論だ。
謝辞
この連載を読んでくれた方へ。
私は専門の哲学者ではない。大学で哲学を学んだこともない。
しかし、現場技術者だからこそ見えるものがある。
AIについて語る専門家は多い。しかし、その多くはAIを現場で使っていない。「AIが仕事を奪う」と警告しながら、自分はAIで仕事をしていない。
私は違う。毎日AIと働いている。現場でAIを使い、AIの限界も知っている。
だから言える。AIは道具だ。使う者を選ぶ道具だ。
あなたにも、あなたの現場がある。
そこで「分かった」ことは、どんな専門家の意見より確かだ。
それが、AI時代を生き抜く力になる。