第4回:出力を上げても届かない理由 ─ 熱意の限界
「頑張れば伝わる、は幻想だ」
なぜ熱意が伝わらないのか
一生懸命、熱く語った。
何度も何度も説明した。
でも、響かない。
「もっと熱意を込めて」
「もっと回数を増やして」
「もっと大きな声で」
そうアドバイスされる。
でも、問題は熱意じゃない。
出力とは何か
電波には出力がある。
ワット(W)で表される。
出力が大きいほど、遠くまで届く。
出力が小さいと、近くにしか届かない。
携帯電話の出力は約0.2W。
基地局の出力は数十W。
AMラジオの送信所は数百kW。
出力を上げれば、確かに届く範囲は広がる。
これは事実だ。
だから、「届かないなら出力を上げればいい」と思う。
でも、それで解決するとは限らない。
出力では解決できないこと
周波数が合っていなければ、いくら出力を上げても届かない。
AMラジオに向かって、どんなに強いFM電波を送っても聞こえない。
周波数が違うから。
出力の問題ではない。
アンテナが合っていなければ、いくら出力を上げても受け取れない。
長波用のアンテナに、どんなに強い短波を送っても捕まえられない。
波長が違うから。
出力の問題ではない。
大声で日本語を叫んでも、日本語が分からない人には伝わらない。
もっと大きな声で叫んでも、伝わらない。
言語が違うから。
出力の問題ではない。
これが「出力の限界」だ。
熱意という出力
人間のコミュニケーションで「出力」は何か。
熱意。
努力。
回数。
声の大きさ。
時間の長さ。
これらが「出力」だ。
熱く語る。
何度も説明する。
粘り強く続ける。
大きな声で伝える。
長い時間をかける。
出力を上げている。
出力で解決できること、できないこと
出力で解決できることがある。
「単純に届いていない」場合。
声が小さすぎて聞こえない。
一回では理解できない。
時間が短すぎて伝わらない。
これは出力を上げれば解決する。
もっと大きな声で。
もっと回数を増やして。
もっと時間をかけて。
でも、出力で解決できないことがある。
「周波数が違う」場合。
相手の価値観、世界観と合っていない。
いくら熱く語っても、周波数が違えば届かない。
「アンテナがない」場合。
相手に経験がなく、受け取れない。
いくら繰り返しても、アンテナがなければ受け取れない。
ノイズになる危険
もっと悪いことがある。
周波数やアンテナが合っていない状態で出力を上げると、ノイズになる。
電波の世界では、周波数が合わない強い電波は「干渉」を起こす。
他の通信を妨害する。
ノイズになる。
人間関係でも同じだ。
相手の周波数に合っていない状態で、熱く語り続ける。
何度も何度も同じことを言う。
大きな声で主張する。
相手にとっては「うるさい」「しつこい」「圧が強い」。
伝わるどころか、逆効果。
関係が悪化する。
熱意が仇になる。
出力を上げる前にすること
だから、順番が大事だ。
まず、周波数を合わせる。
相手の価値観、世界観を理解する。
相手の言葉で話す。
次に、アンテナを確認する。
相手が受け取れる経験、知識を持っているか。
持っていなければ、相手が受け取れる波長に変換する。
その上で、必要なら出力を上げる。
周波数もアンテナも合っているのに届いていないなら、出力を上げる。
この順番を間違えると、努力が無駄になる。
熱意は大切。でも、熱意だけでは伝わらない
誤解しないでほしい。
熱意は大切だ。
努力は大切だ。
粘り強さは大切だ。
でも、それだけでは伝わらない。
周波数が合っていなければ、熱意は届かない。
アンテナがなければ、努力は受け取られない。
熱意と努力は、最後のピース。
周波数とアンテナが合った上で、熱意と努力が効いてくる。
ここまでの気づき
-
熱意(出力)を上げても、周波数やアンテナが合わなければ届かない
- 出力には限界がある。万能ではない
-
出力を上げる前に、周波数とアンテナを確認する
- 順番を間違えると、努力が無駄になる
-
周波数やアンテナが合わない状態で出力を上げると、ノイズになる
- 熱意が逆効果になることがある
次回予告(最終回)
人は電波を出している。
周波数が合わないと届かない。
アンテナの長さが違う。
出力を上げても解決しないことがある。
では、どうすれば伝わるのか?
最終回は、「伝搬経路を設計する」。
電波は直進だけじゃない。
反射する。回折する。散乱する。
複数の経路で届く。
人間のコミュニケーションも同じだ。
一つの経路がダメでも、別の経路がある。
どうすれば伝わるか。
電波伝搬の設計思想を、コミュニケーションに適用する。
次回(最終回):「伝搬経路を設計する ─ どうすれば伝わるか」