#37分

アンテナの長さが違う ─ 受信の器

コミュニケーション人間関係伝え方電波無線仕組み発見視点の転換

第3回:アンテナの長さが違う ─ 受信の器

「経験がなければ、理解できないのは当然だ」


なぜ届いているのに受け取れないのか

周波数を合わせた。

相手の立場で、相手の言葉で話した。


でも、まだ伝わらない。


相手は聞いている。

うなずいている。

でも、本当には分かっていない。


なぜか?


アンテナの問題だ。


波長とアンテナの関係

電波には波長がある。

波長とは、波の山と山の間隔だ。


波長と周波数は反比例する。

周波数が高いと、波長は短い。

周波数が低いと、波長は長い。


具体的に言うと。

AM放送(中波)は波長が数百メートル。

FM放送(VHF)は波長が数メートル。

携帯電話(UHF)は波長が数十センチ。


そして、ここが大事だ。


アンテナの長さは、波長に比例する。


長波を受信するには、長いアンテナが必要。

短波を受信するには、短いアンテナでいい。


理論上、最も効率が良いアンテナは波長の半分の長さ。

だから、携帯電話のアンテナは短い。

昔のAMラジオのアンテナは長かった。


アンテナの長さが波長に合っていないと、電波を効率的に捕まえられない。


人間のアンテナ=受容力

人間にも「アンテナ」がある。


経験の幅。

知識の深さ。

感性の鋭さ。

想像力の広がり。


これらが「アンテナの長さ」を決める。


長いアンテナを持つ人は、幅広い「波長」を受信できる。

様々な話が理解できる。

様々な感情が分かる。

様々な立場に共感できる。


短いアンテナしか持たない人は、限られた「波長」しか受信できない。

特定の話しか理解できない。

特定の感情しか分からない。

自分と似た立場にしか共感できない。


アンテナがないと受け取れない

経営の経験がない人に、経営の話をしても響かない。


「事業の方向性」「リソース配分」「投資回収」。

言葉は分かる。

でも、本当の意味では分からない。


なぜか?

アンテナがないから。


経営を経験したことがなければ、経営の「波長」を受け取るアンテナが育っていない。


失恋したことがない人に、失恋の辛さを伝えても分からない。


「心が張り裂けそう」「何も手につかない」「世界が灰色に見える」。

言葉は分かる。

でも、本当の意味では分からない。


なぜか?

アンテナがないから。


失恋を経験したことがなければ、失恋の「波長」を受け取るアンテナが育っていない。


これは相手の問題ではない

ここが大事だ。


アンテナがないのは、相手の「能力」の問題ではない。

「経験」の問題だ。


経営を経験していなければ、経営のアンテナは育たない。

失恋を経験していなければ、失恋のアンテナは育たない。

海外で暮らしたことがなければ、異文化のアンテナは育たない。

子育てをしたことがなければ、親の気持ちのアンテナは育たない。


経験がなければ、アンテナは育たない。


だから、「なぜ分からないんだ」と責めても意味がない。

相手にはアンテナがないのだ。


相手のアンテナに合わせる

では、どうすればいいか。


相手が持っているアンテナで受け取れる波長で発信する。


経営経験がない相手に、経営の話をしたいなら。

経営の波長ではなく、相手が持っているアンテナで受け取れる波長に変換する。


「会社全体の売上」ではなく「あなたのチームの予算」。

「市場シェア」ではなく「あなたの担当顧客」。

「投資回収」ではなく「あなたの仕事の成果」。


相手が経験したこと、知っていることに置き換える。


失恋経験がない相手に、失恋の辛さを伝えたいなら。

失恋の波長ではなく、相手が持っているアンテナで受け取れる波長に変換する。


「心が張り裂けそう」ではなく「大事な友達と絶交した時みたいな」。

「何も手につかない」ではなく「テスト前なのに全く集中できない感じ」。


相手が経験したことに置き換える。


アンテナを育てる

もう一つの方法がある。


相手のアンテナを育てる。


経験がなければ、アンテナは育たない。

だから、経験させる。


経営を理解させたいなら、小さな経営を経験させる。

プロジェクトのリーダーをやらせる。

予算管理をやらせる。

意思決定をやらせる。


すると、少しずつ経営のアンテナが育つ。


でも、これには時間がかかる。

すぐには育たない。


だから、今すぐ伝えたいなら、相手のアンテナに合わせる方が現実的だ。


自分のアンテナを育てる

逆もある。


自分のアンテナを育てることも大事だ。


経験を積む。

知識を増やす。

感性を磨く。

想像力を広げる。


いろんな人と話す。

いろんな場所に行く。

いろんな本を読む。

いろんな仕事をする。


すると、アンテナが長くなる。

幅広い「波長」を受信できるようになる。


様々な人の話が分かるようになる。

様々な感情が分かるようになる。

様々な立場に共感できるようになる。


ここまでの気づき

  1. アンテナの長さ(受容力)は人によって違う

    • 経験、知識、感性がアンテナの長さを決める
  2. アンテナがなければ、どんな電波も受け取れない

    • 経験がなければ、理解できないのは当然
  3. 相手のアンテナに合わせた波長で発信する

    • 相手が受け取れる経験、知識に置き換えて伝える

次回予告

周波数を合わせた。

アンテナに合わせた波長で発信した。


「でも、もっと熱意を込めれば伝わるはず」

「何度も繰り返せば、いつか届くはず」


そう思っていないか?


違う。


出力を上げても、解決しないことがある。

熱意を込めても、伝わらないことがある。


なぜか?

出力には限界があるからだ。


次回は、「出力」の話をする。

なぜ熱意だけでは伝わらないのか。


次回:「出力を上げても届かない理由 ─ 熱意の限界」