第2回:周波数が合わないと届かない ─ 相手の世界観
「同じ言葉なのに、なぜ響く人と響かない人がいるのか」
なぜ伝わらないのか
部下に何度も同じことを言う。
「スピード感を持って」
「もっと主体的に」
「お客様目線で」
でも、全く響かない。
何度言っても変わらない。
「なぜ分からないんだ」とイライラする。
でも、それは部下の問題じゃない。
あなたの説明が下手なわけでもない。
周波数が合っていないのだ。
周波数とは何か
電波には周波数がある。
1秒間に波が何回振動するか。
単位はヘルツ(Hz)。
AM放送は500kHz〜1600kHz(中波)。
FM放送は76MHz〜108MHz(VHF)。
携帯電話は700MHz〜3.5GHz(UHF以上)。
周波数が違えば、受信できない。
AMラジオで、FM放送は聞けない。
FMラジオで、携帯電話の通話は聞けない。
同じ「電波」なのに、周波数が違えば別物だ。
受信機は、特定の周波数にチューニングされている。
その周波数の電波しか受信できない。
どんなに強い電波でも、周波数が違えば届かない。
人間の周波数=世界観
人間にも「周波数」がある。
価値観。
経験。
知識。
関心。
立場。
これらが「周波数」を決める。
同じ言葉でも、周波数が違えば意味が変わる。
「効率」という言葉。
経営者には「コスト削減」と響く。
エンジニアには「処理速度」と響く。
新入社員には「残業を減らす」と響く。
同じ言葉。
でも、周波数が違うから、意味が変わる。
「成長」という言葉。
野心家には「昇進」と響く。
職人気質には「スキル向上」と響く。
安定志向には「不安」と響く。
同じ言葉。
でも、周波数が違うから、響き方が変わる。
周波数のミスマッチ
経営者の周波数と、新入社員の周波数。
これは違う。
経営者は「売上」「利益」「市場」で考える。
新入社員は「自分の仕事」「評価」「休み」で考える。
周波数が違う。
だから、経営者の言葉が新入社員に届かない。
親の周波数と、子供の周波数。
これも違う。
親は「将来」「安定」「世間体」で考える。
子供は「今」「楽しさ」「友達」で考える。
周波数が違う。
だから、親の言葉が子供に届かない。
専門家の周波数と、素人の周波数。
これも違う。
専門家は「専門用語」「理論」「前提知識」で話す。
素人は「具体例」「メリット」「自分ごと」で聞きたい。
周波数が違う。
だから、専門家の説明が素人に届かない。
どんなに叫んでも届かない
ここが大事だ。
周波数が合っていなければ、どんなに大声で叫んでも届かない。
AMラジオに向かって、どんなに強いFM電波を送っても、聞こえない。
周波数が違うから。
部下に向かって、どんなに熱く「経営視点を持て」と言っても、響かない。
周波数が違うから。
子供に向かって、どんなに真剣に「将来のため」と言っても、響かない。
周波数が違うから。
出力の問題じゃない。
熱意の問題じゃない。
周波数の問題だ。
周波数を合わせる
無線通信では「チューニング」する。
受信したい周波数に合わせる。
人間のコミュニケーションも同じだ。
相手の周波数に合わせて発信する。
経営者が新入社員に話すなら。
「売上」「利益」「市場」ではなく。
「あなたの仕事がどう評価されるか」「どうスキルアップできるか」。
新入社員の周波数で話す。
親が子供に話すなら。
「将来」「安定」「世間体」ではなく。
「今どう楽しくなるか」「友達にどう思われるか」。
子供の周波数で話す。
専門家が素人に話すなら。
「専門用語」「理論」「前提知識」ではなく。
「具体例」「メリット」「あなたにどう関係するか」。
素人の周波数で話す。
相手の周波数を知る
では、相手の周波数をどう知るか。
聞く。
観察する。
想像する。
相手は何に関心があるか。
相手は何を大事にしているか。
相手はどんな経験をしてきたか。
相手はどんな立場にいるか。
これを知ることが、周波数を知ること。
相手の周波数が分かれば、その周波数で発信できる。
そうすれば、届く。
ここまでの気づき
-
人間にも「周波数」がある
- 価値観、経験、知識、立場が周波数を決める
-
周波数が合わないと、どんなに叫んでも届かない
- 出力(熱意)の問題ではない。周波数のミスマッチ
-
相手の周波数に合わせることが、伝わる第一歩
- まず相手の周波数を知る。そして、その周波数で発信する
次回予告
周波数を合わせた。
相手の立場で、相手の言葉で話した。
でも、まだ伝わらない。
なぜか?
アンテナの問題だ。
電波を受信するには、アンテナが必要だ。
そして、アンテナには「波長」に合った長さがある。
波長が合わないと、電波を捕まえられない。
人間にも「アンテナ」がある。
経験の幅、知識の深さ、感性の鋭さ。
これが「アンテナの長さ」を決める。
アンテナがなければ、どんな電波も受け取れない。
次回は、「アンテナ」の話をする。
次回:「アンテナの長さが違う ─ 受信の器」