結局、どう生きればいいのか
空海なら、こう問いかけるかもしれない。「今日、一つだけ本音を生きてみたら、どうなるだろう」
ここまでの話
迷いの正体が分かった。
体と口と心がバラバラになっている。 それを揃えればいい。
後悔の正体が分かった。
「別の選択をした自分」は幻だ。 追いかけるな。今を生きろ。
将来の不安の正体が分かった。
見えないのは、まだ変えられるから。 自分にできることをやって、あとは委ねろ。
孤独の正体が分かった。
深さへの入口だ。 一人で潜れ。底で全部つながる。
じゃあ、結局どう生きればいいのか。
それが、最後の問いだ。
空海の最後の言葉
空海は62歳で亡くなった。
死の直前、こう言ったと伝えられている。
「虚空尽き、衆生尽き、涅槃尽きなば、我が願いも尽きなん」
虚空が尽きるまで。 全ての生命が救われるまで。 涅槃が尽きるまで。
私の願いは尽きない。
宇宙が終わるまで、願い続ける。
空海は今も、高野山の奥の院で「入定」している、と言われる。
死んだのではなく、深い瞑想に入ったまま、今も願い続けている。
これは伝説だ。
でも、空海の願いが今も生きていることは事実だ。
1200年経っても、空海の言葉は残っている。 1200年経っても、空海の教えは人を救っている。
「完成」を目指すな
空海の教えから、一つ言えることがある。
「完成」を目指すな。
「迷いを完全に消す」 「後悔をゼロにする」 「不安を完全に克服する」 「孤独を完全に解消する」
そんなことは、できない。
空海だってできなかった。
死ぬまで願い続けた。 「尽きない」と言った。
終わりはない。完成はない。
でも、それでいい。
完成がないから、生きていられる。
もし全てが解決したら、生きる意味がなくなる。
迷いがあるから、考える。 後悔があるから、深くなる。 不安があるから、備える。 孤独があるから、つながりを求める。
それでいい。
「今日」だけ
じゃあ、何をすればいいのか。
「今日」だけを考えろ。
10年後を考えるな。 5年後も考えるな。 来年も、来月も、来週も考えるな。
今日だけ。
今日、何をするか。 今日、どう生きるか。
それだけ。
今日、一つだけ本音を言う。
今日、一つだけ「やりたくないこと」を断る。
今日、一つだけ「やりたいこと」をやる。
今日、10分だけ一人で静かに座る。
今日、深呼吸を3回する。
それだけでいい。
この連載で考えてきた5つの問い
この連載で、空海の視点から5つのことを考えてきた。
1. 体と口と心は、揃っているだろうか
迷いの正体は、三つのバラバラなのかもしれない。 思っていることを言ってみたら。言ったことをやってみたら。 何か変わるだろうか。
2. 追いかけているのは、実在するものだろうか
「別の選択をした自分」は存在しない。 実在するのは、今のあなただけだ。 今を生きるとは、どういうことだろう。
3. 見えないのは、変えられるからではないだろうか
見えないことは、恐怖じゃないのかもしれない。 自分にできることをやって、あとは委ねてみたら。
4. 深く潜った先には、何があるだろう
孤独は深さへの入口なのかもしれない。 一人で深く潜ってみたら、何が見えるだろう。
5. 今日だけを生きてみたら、どうなるだろう
完成を目指さなくていいのかもしれない。 10年後を考えなくていいのかもしれない。 今日、一つだけ本音を生きてみたら。
空海なら、こう問いかけるかもしれない
「今日、一つだけ本音を生きてみたら、どうなるだろう」
大きなことをしなくていい。 人生を変えなくていい。 悟りを開かなくていい。
今日、一つだけ。
本音を言ってみたら。 本音で断ってみたら。 本音でやってみたら。
何が変わるだろう。
それを毎日続けたら、何が起きるだろう。
1200年前、空海は問い続けていた。
迷っていい。 後悔していい。 不安でいい。 孤独でいい。
それでも、今日をどう生きるか。
今日、一つだけ本音を生きてみたら。
その先に、何があるだろう。
(連載終了)