みんな、どこへ向かってる?
イワシの群れを見たことがあるだろうか。
水族館でもテレビでもいい。
何千匹ものイワシが、同じ方向に泳いでいる。
一糸乱れぬ動き。 誰かが号令をかけたわけでもないのに、全員が同じ方向へ。
美しい。
でも、ふと思う。
あの群れ、どこへ向かってるんだろう。
そして、なぜその方向なんだろう。
答えは、意外とシンプルだ。
隣のイワシに合わせている。
それだけ。
隣のイワシも、その隣のイワシに合わせている。
その隣のイワシも、そのまた隣に合わせている。
全員が「隣に合わせている」だけで、誰も「なぜその方向か」を考えていない。
群れの力学
生物学者たちは、この群れの動きを研究した。
分かったことがある。ルールは3つだけ。
- 隣と同じ方向に進む
- 隣と近づきすぎない
- 隣から離れすぎない
たったこれだけで、何千匹もの群れが生まれる。
リーダーはいない。 指令もない。 ただ、隣に合わせるだけ。
効率的だ。
捕食者が来ても、群れでいれば生存率が上がる。 エサを見つけても、群れで共有できる。
群れは、生きるための最適解だ。
でも、一つだけ問題がある。
「なぜその方向か」を、誰も考えていない。
人間も、そうかもしれない
朝起きて、満員電車に乗る。
みんな同じ方向に歩いている。 駅のホームで、同じ方向を向いている。 改札を出て、同じ方向に進んでいる。
いい大学に入る。 いい会社に入る。 結婚する。 家を買う。 子どもを育てる。
「普通」のルートだ。
なぜそのルートなのか。
考えたことがあるだろうか。
「みんながそうしてるから」
たぶん、それが一番正直な答えだ。
SNSを見る。
みんなが副業を始めている。だから自分も。 みんながNISAを始めている。だから自分も。 みんなが転職を考えている。だから自分も。
始める理由は、「みんながやってるから」。
隣のイワシに合わせている。
それだけ。
「普通」という名前の群れ
「普通」は便利な言葉だ。
「普通、こうするよね」 「普通、そうでしょ」 「普通に考えて」
この「普通」の正体は何だろう。
多数派。
それ以上でも、それ以下でもない。
「普通」は、多くの人がそうしている、というだけの事実だ。
正しいかどうかは、関係ない。
昔は「普通」だったことがある。
女性が働かないのは「普通」だった。 日曜日に店が閉まるのは「普通」だった。 知らない人の車に乗るのは「普通じゃない」ことだった。
今は全部、変わった。
「普通」は変わる。
つまり、今の「普通」も、10年後には「普通じゃない」かもしれない。
なのに、今の「普通」に合わせて生きている。
立ち止まった一匹
群れの中の1匹が、ふと立ち止まった。
立ち止まったというか、周りを見渡した。
みんな、同じ方向に泳いでいる。
でも、なぜその方向なんだろう。
聞いてみたい。でも、聞ける相手がいない。
みんな、泳ぐのに忙しい。
会社で、ふと思うことがある。
「この仕事、なんのためにやってるんだろう」
でも、聞けない。 みんな忙しそうだから。 そして、自分も忙しいから。
忙しいとき、人は考えない。
考えないとき、人は群れに従う。
群れに従うとき、人は方向を確かめない。
イワシと同じだ。
ここまでの気づき
- 群れは「隣に合わせる」だけで成立する。リーダーも指令もいらない
- 「みんながやってるから」は、行動の理由としては最も弱い
- 「普通」は多数派というだけで、正しさの証明ではない
明日へ
群れは、楽だ。 考えなくていい。 迷わなくていい。
でも、もし1匹が群れを離れたら。
離れたら、何が見えるのだろう。 そして、何を失うのだろう。
明日は、その話をしてみたい。