人間は、バグる
あなたは、いつも正しく判断できているだろうか。
冷静に、論理的に。
そう思っている人ほど、聞いてほしい。
私たちは、自分の頭を、わりと信用している。
でも、その頭は、思っているより、あてにならない。
朝と夜で、答えが変わる
同じ問題を、朝に考える。
そして、夜にもう一度考える。
違う答えに、たどり着くことがある。
問題は、何も変わっていない。
変わったのは、自分のほうだ。
満腹のときと、空腹のとき。
機嫌のいいときと、悪いとき。
疲れているときと、休めたとき。
人間の判断は、その時々で、揺れる。
同じ自分の中に、たくさんの「自分」がいる。
裁判官ですら、昼食の前と後で、判決の傾向が変わるという研究が知られている。
法律の専門家でさえ、お腹の空き具合に、判断を左右される。
私たちは、コンピュータのように、いつも同じではいられない。
脳には、癖がある
行動経済学に、「認知バイアス」という言葉がある。
簡単に言えば、「ものを見るときの、脳の癖」だ。
まっすぐ見ているつもりで、少し歪んで見えている。
たとえば、最初に見た数字に、その後の判断が引っ張られる。
たとえば、自分に都合のいい情報ばかり、目に入る。
その歪みは、知識では消せない。
「気をつけよう」と思っても、なくならない。
なぜなら、それは個人の欠陥ではなく、
人間の脳が、そういう作りになっているからだ。
完全には、なれない
20世紀の経済学者ハーバート・サイモンは、こう考えた。
人間の知識にも、計算能力にも、時間にも、限界がある。
だから人は、いつも「最も合理的な答え」を選んでいるわけではない。
「そこそこ納得できる答え」が見つかった時点で、手を打っている。
彼はこれを、「限定合理性」と呼んだ。
私たちは、限られた頭で、限られた時間の中で、判断をしている。
すべてを見渡してから決めることなど、できない。
それが、悪いわけではない。
ただ、そういう生き物なのだ、と知っておくだけでいい。
ここまでの気づき
- 同じ人が、朝と夜で、満腹と空腹で、違う判断をする。裁判官ですら昼食で傾向が変わる。私たちは、いつも同じではいられない
- 認知バイアスは「脳の癖」。知識では消えない。個人の欠陥ではなく、人間の脳がそういう作りになっている
- サイモンの「限定合理性」。人は最も合理的な答えではなく、そこそこ納得できる答えで手を打って生きている
明日へ
人間は、バグる。
では、どんなふうにバグるのか。
実は、私たちは「正しく考えているつもり」のときほど、間違えている。
明日は、その話をしてみたい。