PMBOK-AI note連載 #17分で読めます

PMBOK-AI宣言:AIを1年使い倒して残ったルール

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PMBOK-AI宣言:AIを1年使い倒して残ったルール

PMBOK-AI宣言:AIを1年使い倒して残ったルール


いま起きていること

AIがチームメンバーになる日は、もう来ている。 パンダオフィスでは2025年10月に最初の案件の開発をAIと組んで始め、そのまま1年が過ぎた。

  • 利用量:計測を始めた2025年12月27日から2026年10月14日までの累計は、3,024,411メッセージ、5,059セッション。記録のある日は284日だった。月別のメッセージ数は2月が607,708で最も多く、9月が447,914で2番目に多い。

  • モデルの交代:主力モデルは約2か月ごとに替わった。12月末は Opus 4.5、9月23日には Opus 5.5 を導入している。モデルの名前で書いたルールは、そのたびに古くなった。

  • 前提の崩れ:当初のやり方は「多く任せるほど良い」だった。コード変更の直後にレビュー役を起動し、独立した作業は常に並列で回した。この前提は、事故と費用の記録で1つずつ崩れていった。

  • 作業量:全リポジトリのコミット数は、2026年2月の28から、9月の2,941まで増えた。管理するシステムは、受託15、自社プロダクト11、プラットフォーム18、Webとランディングページ7の計51になった。2026年5月からは、朝7時と夕19時にAIが状況を報告する常駐の仕組みが動いている。

作業が安くなると、作業は増える。増えた作業を、誰が何のために許すのか。1年で最も重くなったPMの仕事は、この問いに答えることだった。

外の数字も同じ方向を向いている。McKinsey の2026年の調査では、回答者の80%が「AIで自分の生産性が上がった」と答えた一方、利益(EBIT)にプラスの寄与があった組織は37%で、前年からほぼ横ばいだった。使うことと、成果が出ることは別の話である。

(出典:自社のAI利用統計 2025-12-27〜2026-10-14(3台合算)/自社のコミット記録・システム台帳 2026-10/McKinsey「The state of AI in 2026: On the road to ROI」2026-08-25)


PMの仕事で何が変わるか

AIが答えるだけの道具だったころ、PMの仕事は「どこにAIを入れるか」を決めることだった。入れた後は、人が答えを読んで使うかを決めていた。

AIエージェントがチームに入ると、この順番が逆になる。入れること自体は簡単になり、難しいのは入れた後に何を人に残すかになる。パンダオフィスの1年で、任せ方が変わった節目は次のとおりだ。

時期起きたこと残ったルール
2026年5月メール送信の権限を取らない外部への送信は取り消せないので、人が行う
2026年6月朝の報告で、渡した確定データをAIが改変した確定した数字はAIを通さず、プログラムが直接書き込む
2026年8月レビューが1本のスクリプトで19周した重大な指摘がゼロになったら終わり。上限は3周
2026年8月退避前のデータを削除コマンドに混ぜて消した削除は、退避が済んだものだけ
2026年9月予定やタスクの書き込みを承認制にした人が承認ボタンを押すまで、書き込みは実行されない

どの転換にも、具体的な事故か費用がきっかけとしてあった。思想から決めたルールは、この表に1つもない。

(出典:自社の作業記録・設定の変更記録 2026-05〜09)


PMBOK-AIではこう扱う

PMBOK-AIは、AIを道具ではなくチームメイトとして扱う。そのうえで、最終的な判断と責任は人に残す(Human-in-Command)。この立場は1年前も今も変わっていない。変わったのは、その中身が事故で具体的になったことだ。PMBOK-AIの全体像はこちら。

図:PMBOK-AIの7原則

1年で残ったルールは、次の4つにまとまった。

1. 取り消せない操作は、人に残す。 削除、本番への反映、外部への送信、費用の発生。この4つは、AIが実行できない形にしておく。権限を広げるのは、その外側からだ。AIに任せる範囲の判断軸は別の記事で整理している。

2. 守らせたいことは、仕組みで守らせる。 書いた規約は、AIにとって判断材料の1つにすぎない。レビューの終了条件は、AIの自己申告ではなく、フックという仕組みで判定するようにした。

3. 確かめる場面は絞る。 何でも確かめると、レビュー19周のように人もAIも疲れる。確かめるのは、数字の出典、最新の情報、過去の記録、完了の報告の4場面に絞った。

4. 足すより、絞って測る。 毎回読み込まれる設定は約45,000トークンまで膨らんでいた。置き場所を分けて約12,000トークンにした。AIは頼めばいくらでも足すので、減らす判断は人がしないと誰もしない。

PMI が2026年6月に公開したAIのための標準も、すべての段階で人が関与すること(human-in-the-loop)を前提にしている。パンダオフィスの経験から言えば、人の関与は薄く広げるより、取り消せない操作に集中させたほうが効いた。

(出典:PMI「The Standard for Artificial Intelligence in Portfolio, Program, and Project Management」2026-06-09/自社の調査記録 2026-08)

PMBOK-AIが宣言するのは、次の3つである。

  • AIは、チームメイトとして迎える。 道具として棚に置くのではなく、役割と権限を決めて仕事に入れる。
  • 判断と責任は、人が握る。 握る範囲は広く薄くではなく、取り消せない操作と入力の質に集中させる。
  • ルールは、事故から作る。 思想から先に決めたルールは、1年で1つも残らなかった。

連載の以降の記事は、この4つのルールを、リスク、品質、責任分担、指示の出し方といった領域ごとに、実例で掘り下げる。


明日からやること

  • AIに任せている作業を書き出し、「取り消せる」「取り消せない」に分ける
  • 取り消せない作業は、人が押さないと実行されない形にする
  • 守らせたい規約を1つ選び、書いただけで終わっていないか確認する
  • 毎回AIに読ませている設定や規約の量を、一度数える
  • 自社の事故や費用の記録から、任せ方を変えた節目を3つ書き出す

まとめ

AIがチームメンバーになった後の1年で残ったのは、任せた量の記録ではなく、人に残した操作の一覧だった。

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