AI PMの1年史:PMBOKの各領域で実際に起きたこと
AI PMの1年史:PMBOKの各領域で実際に起きたこと
いま起きていること
PMBOKの外側と内側で、同じ1年に別々のことが起きた。 外では標準と試験が更新された。内側では、パンダオフィスが5つの時代を通った。並べると次のようになる。
| 時期 | 外の動き | パンダオフィス |
|---|---|---|
| 2025年10月 | — | 最初の案件をAIと組んで開始(時代1:全部AIと組む) |
| 2025年11月 | PMBOKガイド第8版(デジタル版) | 本書『PMBOK-AI』のリポジトリを作成 |
| 2026年3月 | AI事業者ガイドライン第1.2版が、AIエージェントを対象に加える | 1本の長い対話から並列のチームへ(時代2) |
| 2026年5月 | Microsoft の Agent 365 が一般提供を開始 | 全社のリポジトリを一本化。朝夕にAIが報告する運用が始まる(時代3) |
| 2026年6月 | PMI が AI のための標準を公開 | 14章を5体のAIで事実確認。承認を4段階に |
| 2026年7月 | 新しいPMP試験が開始。MCPの新しい仕様が公開 | 共有基盤の設定変更で別のアプリが20分停止 |
| 2026年8〜9月 | — | 絞る・測る・止める(時代4) |
| 2026年10月 | Google が業務用の「Gemini agent」を発表 | サイトを「AI社員の事務所」に刷新(時代5:見せて売る) |
5つの時代の転換を、一文ずつ書くと次のとおりだ。時代1は「ときどき使う」から「測りながら全部AIと組む」へ。時代2は「1本の長い対話」から「並列のチーム」へ。時代3は「人がAIに頼む」から「AIが常駐して朝に報告する」へ。時代4は「足す」から「絞る・測る・止める」へ。時代5は「社内の道具」から「見せて売るモデルハウス」へ。どの転換にも、具体的な事故か費用がきっかけとしてあった。
利用量でみると、メッセージ数は2026年2月の607,708が最多で、9月は447,914だった。
(出典:PMBOKガイド第8版 2025-11/総務省・経済産業省 2026-03-31/Microsoft 2026-05-01/PMI 2026-06-09/PMI 新PMP試験 2026-07-09/MCP 2026-07-28/Google Cloud 2026-10-08/自社の作業記録・AI利用統計)
PMの仕事で何が変わるか
PMBOKは、プロジェクトを領域に分けて管理する。この1年、領域ごとに起きたことを短く挙げる。
| 領域 | 実際に起きたこと |
|---|---|
| スコープ | AIは作業を安くし、安くなった作業は増えた。リポジトリは135本に増え、うち非アーカイブは66本に絞った。決めるのは「作る量」ではなく「やめる量」になった |
| スケジュール | AIが担う作業は並列化で縮んだが、契約、法務、外部サービスの手続きは前倒しできなかった |
| コスト | 失敗したビルドにも課金された。1本のスクリプトのレビューが19周した。画像生成を個別に繰り返し、2日で約5,000円を使った |
| 品質 | ビルドも型チェックも通ったのに、記事10本が表示されなかった |
| 資源 | 主力モデルが約2か月ごとに替わった。AIの運用費は月3〜5万円の規模だった |
| リスク | 共有基盤の設定変更で別のアプリが止まり、退避前のデータを一括削除で消した |
| ガバナンス | 外部への影響がある操作は、承認を4段階に分けた |
領域の名前は昔と変わらない。変わったのは、各領域でいちばん重い問題の位置だ。スケジュールの律速は作業の速さから人の手続きに移り、リスクの中心はAIの間違いから取り消せない操作に移った。
試験の側にも動きがある。新しいPMP試験の配分は、People が42%から33%、Process が50%から41%に下がり、Business Environment が8%から26%に上がった。AIは独立した科目ではなく、場面設定の一部として出題される。
(出典:自社の作業記録 2026-06〜09/PMI 新PMP試験 2026-07-09)
PMBOK-AIではこう扱う
PMBOK-AIは、PMBOKの領域を置き換えない。領域の上に、AIエージェントを入れたときの追加の問いを重ねる。PMBOK-AIの全体像はこちら。
1. 外の標準は、地図として使う。 PMI の標準は、技術に依存せず、すべての段階で人が関与すること(human-in-the-loop)を前提にしている。この前提は、自社の1年の結論と矛盾しない。ただし自社の経験では、人の関与を薄く広げるより、取り消せない操作と入力の質に集中させたほうが効いた。
2. 領域ごとに、重い問題の位置を測る。 上の表の「実際に起きたこと」は、事故と費用の記録から拾ったものだ。自社の領域別の表は、記録がたまるほど書き換わる。
3. 事実は日付つきで持つ。 モデルは約2か月ごとに替わり、規則も更新される。たとえばEUのAI規則は、高リスク義務の日程が2026年7月の改正で延期された。年表に日付を付けておけば、古くなった記述を見つけやすい。AIに任せる範囲と判断軸はこちら。
なお、本稿はPMBOKガイド第8版の中身には立ち入らない。扱ったのは公開の時期までで、第8版との対応づけは、中身を読んだうえで別に行う。5つの時代それぞれの詳しい記録は、別のシリーズにまとめる。
(出典:PMI 2026-06-09/EU Regulation 2026/1744 2026-07-27)
明日からやること
- 自社の1年を、外の動き(標準、規則、新しいモデル)と並べて年表にする
- PMBOKの領域ごとに、この1年でいちばん重かった問題を1行ずつ書く
- 各領域の問題が「AIの間違い」か「取り消せない操作」かを分ける
- 年表の事実に、日付と出典を付ける
- 使っているAIモデルの導入日を一覧にし、入れ替えの周期を確認する
まとめ
PMBOKの領域は昔のままで、各領域でいちばん重い問題の位置が動いた。まず自社の1年を年表にすると、その位置が見える。
