第5回:マーケティングへの応用
「流れの中に、接点を作る」
流れを売上に変える
流動は本能から生まれ、刺激で操れる。
最終回は、これを売上につなげる話だ。
核心はシンプル。
人の流れを理解し、その流れの中に自分の「接点」を置く。
立地選びの本質
店舗ビジネスで最も重要なもの。それは立地だ。
「立地が8割」と言われるのには理由がある。
立地とは、流動の中に存在すること
人の流れが多い場所。そこに店があれば、見てもらえる。見てもらえれば、入ってもらえる可能性がある。
流れがない場所に店を出しても、存在を知られない。
「通る」と「止まる」は違う
ただし、流れが多ければいいわけではない。
駅の改札前。人は多い。でも、みんな急いでいる。立ち止まらない。
駅ナカのカフェ。人は流れている。でも、電車を待つ間に立ち寄る人がいる。
「通る場所」より「止まる場所」の方が、接点を作りやすい。
立地選びのチェックポイント
- 人の流れはあるか(量)
- どんな人が流れているか(質)
- 立ち止まる理由があるか(滞留)
- 視認性はあるか(気づかれるか)
- 入りやすさはあるか(障壁の有無)
流動の視点で立地を見ると、判断が変わる。
出店・ポップアップ戦略
常設の店舗を持たなくても、流動を活かす方法がある。
既存の流動に「乗っかる」
イベント、フェス、マルシェ。そこには既に人の流れがある。
自分で集客しなくても、流れの中に出店すれば、人と接点が持てる。
- 音楽フェスの出店
- 商業施設のポップアップ
- 地域のマルシェ
これは流動を「借りる」戦略だ。
タイミングを選ぶ
流動には波がある。
- 平日と週末
- 午前と午後
- 季節やイベント
流動が最大になるタイミングを選ぶ。あるいは、競合が少ないタイミングを狙う。
場所取りの重要性
同じイベントでも、ブースの位置で結果が変わる。
- 入口近く vs 奥
- メイン動線上 vs 端
- 人気ブースの隣 vs 孤立
流動を読んで、最適な場所を取る。早い者勝ちなら、早く申し込む。
サンプリング・街頭広告
もっと身軽に流動を活かす方法もある。
流れを止めずに接点を作る
駅前でティッシュを配る。チラシを渡す。
これは、流れの中に「接点」を挿し込む行為だ。
ポイントは、流れを止めないこと。
- 邪魔にならない位置
- さっと渡せるタイミング
- 受け取りやすい持ち方
流れを止めると、嫌がられる。流れに乗りながら渡すと、受け取ってもらえる。
配る場所と時間
誰に渡したいか。その人がどこを、いつ流れているか。
- ビジネスパーソンなら、朝の駅
- 主婦層なら、昼のスーパー前
- 学生なら、夕方の学校近く
ターゲットの流動を読んで、場所と時間を決める。
街頭広告・看板
看板も、流動の中の接点だ。
- 視認性:流れている人の目に入るか
- 視認時間:何秒見られるか
- メッセージ:その時間で伝わるか
車で通過するなら、一瞬で伝わるメッセージ。歩いて通るなら、もう少し情報を載せられる。
流動のスピードに合わせた設計が必要だ。
店舗内の流動マーケティング
店に入ってもらった後も、流動設計は続く。
入店 → 回遊 → 滞留 → 購買
この流れを設計する。
入店
まず、入ってもらう。
入口の障壁を下げる。中が見える、明るい、入りやすい雰囲気。
回遊
店内を歩いてもらう。
目玉商品を奥に。一方通行の動線。「もう少し見ていこう」と思わせる。
滞留
立ち止まってもらう。
試着、試用、試食。手に取ってもらう仕掛け。
購買
最終的に買ってもらう。
レジ前の衝動買いゾーン。限定感、今だけ感の演出。
各フェーズで、適切な刺激を配置する。
リアルとデジタルをつなげる
流動は、物理的なものだけではない。
リアルで認知、デジタルで購買
店舗で商品を見る。でも、その場では買わない。
家に帰ってから、ネットで検索して買う。
これは「ショールーミング」と呼ばれる。
店舗の役割は「体験」と「認知」。購買はデジタルで。この流れを設計に組み込む。
デジタルで認知、リアルで体験
SNSで見かけた商品。気になる。
実際に手に取りたくて、店舗に行く。
これは逆の流れだ。デジタルがリアルへの流動を生んでいる。
流動はつながっている
リアルの流動とデジタルの流動は、別々ではない。
- 店舗で見た → SNSで検索
- SNSで見た → 店舗に行く
- 口コミを読んだ → イベントに行く
この「流動のつながり」を意識して、接点を設計する。
流動を読む、流動を作る
マーケターにとって、流動には2つのアプローチがある。
流動を読む
既存の流れを観察し、理解する。
- どこに人が多いか
- どの時間帯に流れるか
- どこで立ち止まるか
読めれば、最適な場所とタイミングが分かる。
流動を作る
自分で流れを生み出す。
- 刺激を設計して、人を引き寄せる
- イベントを作って、人を集める
- 話題を作って、来店を促す
読むだけでなく、作ることもできる。
両方を使いこなすことが、流動マーケティングだ。
シリーズを終えて
人は流れている。
その流れを見る目を持てば、世界の見え方が変わる。
明日、街を歩くとき、人の流れを観察してみてほしい。
なぜ、あの人はあそこで立ち止まったのか。
答えは、必ず見つかる。
まとめ:3つの洞察
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流れの中に接点を作る:人の流れを理解し、その流れの中に自分の存在を置く。それが流動マーケティングの基本
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入店→回遊→滞留→購買:店舗内でも流動設計は続く。各フェーズで適切な刺激を配置する
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読む+作る:既存の流動を読むだけでなく、自分で流動を作ることもできる。両方を使いこなす
シリーズ全体のまとめ
第1回:流動は本能から生まれる 猫が光を追うように、人も本能で動く。流動は意志ではなく、刺激への反応。
第2回:流動の因数分解 刺激 → 感情 → 欲求 → 行動。この連鎖を理解すれば、流動を逆算で設計できる。
第3回:流れを生む刺激、止める刺激 光、音、匂い、人だかり。何が人を動かし、何が人を止めるか。刺激のカタログ。
第4回:流動をデザインする 「流す」と「溜める」の使い分け。IKEA、コンビニの事例から学ぶ設計原則。
第5回:マーケティングへの応用 立地選び、出店戦略、店舗内設計。流動を売上につなげる具体的な方法。
人は流れている。
その流れを見る目を持ち、流れを活かす設計をする。
それが、流動をデザインするマーケターの仕事だ。