#15分

zipファイルを開くように ─ AIの正体

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第1回:zipファイルを開くように ─ AIの正体

「魔法じゃない。圧縮と解凍。それが分かれば、使いこなせる」

※この連載では「圧縮・解凍」という比喩でAIを説明します。技術的には正確じゃない。でも、AIの本質を理解するには、この比喩が一番腑に落ちる。


ChatGPTに質問したこと、ありますか?

「明日の会議の資料、どう構成すればいい?」

「この英文メール、自然な日本語に直して」

「競合他社の強みを3つにまとめて」

質問を入力すると、すぐに答えが返ってくる。

すごい。

でも、なんで答えられるのか?

「AIだから」

それは答えになっていない。

じゃあ、AIって何だ?


魔法じゃない

AIは「考えて」いるわけじゃない。

AIは「理解して」いるわけじゃない。

人間のように思考しているわけでも、意識があるわけでもない。

じゃあ、何をしているのか?

答え:圧縮されたものを解凍している。

は?

意味が分からない?

大丈夫。今から説明する。


zipファイルの比喩

zipファイル、知っていますか?

パソコンで使うあれ。

大量のファイルを圧縮して、小さくまとめる。

メールで送るとき、よく使う。

開くと、元のファイルが出てくる。

圧縮して、解凍する。


AIも、同じだ。

何を圧縮しているのか?

インターネット上の膨大な情報。

ウェブサイト、ニュース記事、Wikipedia、論文、書籍、SNSの投稿…

想像を絶する量のテキストデータ。

それを「圧縮」した。


質問すると、何が起こるか?

関連する部分を「解凍」して返している。

「マーケティングについて教えて」

→ マーケティングに関する圧縮データを解凍

「この英文を翻訳して」

→ 翻訳パターンの圧縮データを解凍

魔法じゃない。

圧縮と解凍。

それだけ。


圧縮の仕組み

どうやって圧縮しているのか?

パターンを見つけている。

膨大な文章を読み込んで、こう学習する。

「こういう文脈では、こういう言葉が続くことが多い」

「この質問には、こういう答え方が多い」

「この話題には、こういう情報が関連することが多い」

パターン、パターン、パターン。


たとえば、「日本の首都は」と入力する。

AIは考える(いや、考えてはいないけど)。

「この文脈の後には、『東京』が続く確率が圧倒的に高い」

だから「東京」と答える。


もう少し複雑な例。

「効果的なプレゼンの方法を教えて」

AIは、過去に読み込んだ膨大なプレゼン関連の文章から、パターンを解凍する。

「プレゼンの方法を聞かれたら、こういう構成で答えることが多い」

「具体例を入れることが多い」

「箇条書きで整理することが多い」

だから、それっぽい答えが返ってくる。


これが「圧縮」の正体。

膨大な情報から、パターンを抽出して保存している。

質問されたら、そのパターンを解凍して返す。


腑に落ちる瞬間

「AIはインターネットをzip化したもの」

この比喩で、いろんなことが説明できる。


なぜ「知らない」ことがあるのか?

→ 圧縮されていないから。

zipファイルに入っていないファイルは、開いても出てこない。

当然だ。

AIも同じ。

圧縮されていない情報は、聞いても出てこない。


なぜ「古い」情報があるのか?

→ 圧縮時点の情報だから。

zipファイルには、圧縮した時点のファイルしか入っていない。

後から追加されたファイルは、入っていない。

AIも同じ。

学習した時点(圧縮時点)の情報しかない。

だから、最新ニュースは知らない。


なぜ「嘘」をつくのか?

→ 圧縮時にパターンが歪むから。

zipファイルも、圧縮しすぎると壊れることがある。

AIも同じ。

圧縮時に、パターンが歪むことがある。

「それっぽいけど、間違っている」答え。

これが「ハルシネーション」と呼ばれるもの。

AIが嘘をつこうとしているわけじゃない。

圧縮時に歪んだパターンを、解凍しているだけ。


今回の3つの洞察

  1. AIは魔法じゃない。圧縮と解凍だ。

    • 思考でも理解でもない。パターンの圧縮と解凍
  2. インターネットの情報が圧縮されている

    • 膨大なテキストからパターンを抽出して保存
  3. だから、できることとできないことがある

    • 圧縮されたものは出せる。されていないものは出せない

次回予告

「AIはインターネットをzip化したもの」

この比喩で、AIの正体が見えてきた。

でも、ここから大事なことが分かる。

圧縮されたものしか出てこない。

つまり、AIには「できないこと」がある。

次回は、AIの限界を見ていく。

「AIは何でも知っている」

そう思っていると、痛い目を見る。


次回:「圧縮されたものしか出てこない ─ AIの限界」