第2回:圧縮されたものしか出てこない ─ AIの限界
「zipファイルに入っていないものは、開いても出てこない。当然だ」
AIに最新ニュースを聞いたことありますか?
「今日のニュースを教えて」
「昨日の株価を教えて」
「先週発表された新製品について教えて」
AIの答え:
「申し訳ありませんが、私は最新情報にアクセスできません」
なんで?
すごいAIなのに、今日のニュースも知らないの?
zipファイルの比喩を思い出してほしい。
前回、こう説明した。
AIはインターネットをzip化したもの。
この比喩で、AIの限界がすべて説明できる。
圧縮時点の情報しかない
zipファイルには、圧縮した時点のファイルしか入っていない。
当たり前だ。
2023年に圧縮したzipファイルを開いても、2024年のファイルは出てこない。
入っていないから。
AIも同じ。
学習した時点(圧縮時点)の情報しかない。
ChatGPTなら、だいたい2023年くらいまでの情報。
だから、こうなる。
「2024年の出来事を教えて」→ 曖昧な答え、または「分かりません」
「今日の天気は?」→ 答えられない
「昨日発表された決算は?」→ 知らない
これはAIの欠陥じゃない。
構造的な限界。
zipファイルに入っていないファイルは、開いても出てこない。
それと同じ。
圧縮されていない情報は出てこない
もう一つの限界がある。
インターネット上にあっても、圧縮されていなければ出てこない。
たとえば、こんな質問。
「うちの会社の売上データを分析して」
AIの答え:「申し訳ありませんが、御社の売上データにはアクセスできません」
当然だ。
あなたの会社の内部情報は、インターネット上にない。
だから、圧縮されていない。
だから、解凍しようがない。
同じように。
「私の今日のスケジュールを整理して」→ 知らない
「先週の会議で出た課題は?」→ 知らない
「うちのチームの雰囲気は?」→ 知らない
あなただけが知っている情報。
あなたの会社だけが知っている情報。
インターネット上に公開されていない情報。
これらは、圧縮されていない。
マイナーな情報、ニッチな情報も同じ。
インターネット上にあっても、データ量が少なすぎて十分に圧縮されていない。
だから、聞いても曖昧な答えしか返ってこない。
「この業界の特殊な慣習について教えて」
「この地方の方言の使い方は?」
「この分野のマニアックな知識は?」
答えられないか、間違った答えが返ってくる。
圧縮時の歪み ─ ハルシネーション
ここからが怖い話。
zipファイルを圧縮しすぎると、壊れることがある。
開いてみたら、ファイルが破損していた。
そういう経験、ないですか?
AIも同じ。
圧縮時に、パターンが歪むことがある。
これが「ハルシネーション」。
日本語で言うと「幻覚」。
AIが自信満々に、間違ったことを言う現象。
なぜ起こるのか?
AIは「パターン」を圧縮している。
「こういう文脈では、こういう言葉が続く」というパターン。
でも、このパターンが完璧じゃない。
たとえば、こんなことが起こる。
「〇〇という研究者の論文を教えて」
AIは答える。
「〇〇は△△大学の教授で、□□という論文を発表しています」
調べてみると…
その研究者は存在するけど、△△大学にはいない。
□□という論文は存在しない。
AIは嘘をつこうとしているわけじゃない。
圧縮されたパターンから「それっぽい」情報を解凍しただけ。
「研究者の情報を聞かれたら、大学名と論文名を答える」というパターン。
でも、具体的な内容は歪んでいた。
圧縮時に壊れたファイルを、そのまま解凍してしまった。
だから検証が必要
AIの答えは「圧縮されたパターン」。
正確とは限らない。
「AIが言ったから正しい」
これは、大きな間違い。
zipファイルから出てきたファイルが、必ず正しいとは限らない。
破損しているかもしれない。
古い情報かもしれない。
そもそも入っていない情報を、パターンで補完しているかもしれない。
だから、重要な情報は検証する。
AIの答えを出発点にして、自分で確認する。
「参考になる。でも、念のため確認しよう」
このスタンスが大事。
特に注意すべきケース:
- 具体的な数字:統計データ、日付、金額
- 固有名詞:人名、企業名、論文名
- 最新情報:ニュース、法改正、新製品
- 専門的な内容:医療、法律、財務
これらは、圧縮時の歪みが起こりやすい。
必ず一次情報で確認する習慣をつける。
今回の3つの洞察
-
圧縮時点の情報しかない
- 学習時点以降の情報は知らない。構造的な限界
-
圧縮されていない情報は出てこない
- あなただけの情報、社内情報、マイナー情報は対象外
-
圧縮時に歪むことがある(ハルシネーション)
- 自信満々でも間違っている。必ず検証する
次回予告
AIの限界が見えてきた。
圧縮されたものしか出てこない。
圧縮時に歪むこともある。
でも、同じzipファイルでも、開き方で出てくるものが変わる。
解凍の仕方で、結果が変わる。
これが「プロンプト」の本質。
次回は、AIを上手に使うコツを見ていく。
次回:「解凍の仕方で結果が変わる ─ プロンプトの本質」