第3回:解凍の仕方で結果が変わる ─ プロンプトの本質
「同じzipファイルでも、開き方で出てくるものが違う」
同じ質問なのに、答えが違う
こんな経験、ありませんか?
「マーケティングについて教えて」
→ 一般的な説明が返ってくる。教科書みたいな内容。
「BtoB SaaSのマーケティング戦略を、予算100万円で実行できるものを3つ教えて」
→ 具体的で実践的な答えが返ってくる。
同じAI。
同じzipファイル。
なのに、出てくるものが違う。
なぜか?
解凍の指示が違うから。
解凍の指示が違うから
zipファイルを開くとき、選択肢がある。
「全部解凍」もできる。
「一部だけ解凍」もできる。
「このフォルダだけ」「このファイルだけ」
指定できる。
AIへの質問も、同じだ。
「どこを解凍するか」を指示している。
曖昧な指示:
「マーケティングについて教えて」
→ マーケティング全体を、広く浅く解凍
→ 一般的な内容が出てくる
具体的な指示:
「BtoB SaaSのマーケティング戦略を、予算100万円で実行できるものを3つ教えて」
→ BtoB SaaS × マーケティング戦略 × 予算100万円 × 3つ
→ 狭く、深く解凍
→ 具体的な内容が出てくる
同じzipファイルから、違うものを取り出している。
指示が違うから。
プロンプト = 解凍の指示
「プロンプトエンジニアリング」
聞いたことありますか?
AIを上手に使うための技術、みたいに言われる。
難しそうに聞こえる。
でも、本質は簡単。
「どこを、どう解凍するか」の指示。
プロンプト = 解凍の指示
これだけ覚えておけばいい。
具体例を見てみよう。
曖昧なプロンプト:
「プレゼンのコツを教えて」
→ 広く浅く解凍 → 一般論
具体的なプロンプト:
「来週の役員会議で、新規事業の提案をします。役員は数字に厳しいです。10分で説得するためのプレゼン構成を教えて」
→ 役員会議 × 新規事業 × 数字重視 × 10分 × 説得
→ 狭く深く解凍 → 実践的なアドバイス
指示が具体的なほど、欲しい情報が出てくる。
当たり前だ。
「解凍する場所」を正確に指定しているから。
良い解凍指示のコツ
どうすれば、良い解凍指示(プロンプト)が書けるのか?
4つのポイントがある。
1. コンテキストを伝える
「あなたは誰で、何をしているか」
これを伝える。
悪い例:「メールの書き方を教えて」
良い例:「私は営業職で、初めての取引先にアポイントを取りたい。断られにくいメールの書き方を教えて」
コンテキストがあると、AIは「どの部分を解凍すべきか」が分かる。
営業 × 初回アポイント × 断られにくい
この交差点にある情報を解凍する。
2. 目的を伝える
「何のために使いたいか」
これを伝える。
悪い例:「競合分析をして」
良い例:「来月の戦略会議で使う競合分析をして。うちの商品との差別化ポイントを明確にしたい」
目的があると、解凍の「深さ」と「方向」が決まる。
戦略会議 × 差別化ポイント
この方向に深掘りする。
3. 形式を指定する
「どんな形で出力してほしいか」
これを指定する。
悪い例:「会議の議事録を整理して」
良い例:「会議の議事録を、決定事項・TODO・次回までの宿題の3つに分けて、箇条書きで整理して」
形式を指定すると、解凍結果の「見た目」が変わる。
同じ情報でも、整理されて出てくる。
4. 役割を与える
「あなたは〇〇として答えて」
これを伝える。
悪い例:「事業計画のアドバイスをして」
良い例:「あなたはベンチャーキャピタリストです。この事業計画の弱点を3つ指摘して」
役割を与えると、解凍の「視点」が変わる。
VC目線 × 弱点 × 3つ
この角度から情報を解凍する。
これらは全部「解凍の範囲と方法」を指定している
コンテキスト = どの領域を解凍するか
目的 = どの方向に深掘りするか
形式 = どう整理して出力するか
役割 = どの視点から見るか
プロンプトエンジニアリングは、難しい技術じゃない。
「解凍の仕方」を具体的に指示しているだけ。
解凍できないものは出てこない
ただし、大事な注意点がある。
どんなに上手に指示しても、入っていないものは出てこない。
zipファイルに入っていないファイルは、どう指定しても解凍できない。
AIも同じ。
最新情報は出てこない。
あなただけが知っている情報は出てこない。
圧縮されていないマイナー情報は出てこない。
プロンプトは万能じゃない。
「ある情報を、うまく引き出す」のがプロンプト。
「ない情報を、作り出す」ことはできない。
だから、AIに質問するときは、こう考える。
「これは圧縮されているか?」
圧縮されていそうな情報 → プロンプトで上手に引き出す
圧縮されていなさそうな情報 → 自分で調べる、または情報を与える
今回の3つの洞察
-
プロンプト = 解凍の指示
- どこを、どう解凍するかを指示している
-
具体的な指示 → 具体的な結果
- コンテキスト、目的、形式、役割を伝える
-
入っていないものは、どう指示しても出てこない
- プロンプトは万能じゃない。限界を知る
次回予告
プロンプトの本質が分かった。
解凍の指示を上手にすれば、欲しい情報が引き出せる。
でも、限界もある。
圧縮できないものがある。
今の瞬間。
あなただけの経験。
まだ存在しない未来。
責任を取ること。
これらは、どうやっても圧縮できない。
次回は、AIの「本質的な限界」を見ていく。
そして、「人間の価値」を再定義する。
次回:「圧縮できないもの ─ AIの本質的限界」