第2回: 看板広告の費用と効果
あの看板を右に曲がる ─ 広告の本質を問い直す②
看板広告、いくらかかるか知っているだろうか。
「高そう」というイメージはあるかもしれない。
でも、実際の数字を知っている人は少ない。
野立て看板の相場
郊外の道路沿いに立っている、あの看板。
業界では「野立て看板」と呼ばれる。
費用の相場はこうなっている。
初期費用
- 看板製作費: 5万〜15万円
- 設置工事費: 3万〜20万円
- 合計: 8万〜35万円
月額費用
- 広告掲載料: 1.5万〜3万円
意外と安い、と思った人もいるかもしれない。
月額1.5万円なら、年間18万円。
5年契約なら、初期費用込みで100万円程度。
もちろん、場所によって大きく変わる。
都市部の幹線道路沿いなら、月額数十万円。
渋谷や新宿の大型ビルボードなら、月額数百万円。
郊外と都市部で、10倍以上の差がある。
「高い」のか「安い」のか
月額3万円の看板。
高いのか、安いのか。
これを判断するには、比較が必要だ。
広告業界では、CPM(Cost Per Mille)という指標を使う。
1000人に広告を届けるのにいくらかかるか、という数字。
CPMで見る広告メディア
主要な広告メディアのCPMを比較してみる。
※CPMは業界標準として米ドル表記(1ドル≒150円で換算可能)
| メディア | CPM(目安) |
|---|---|
| テレビCM | 10〜30ドル |
| デジタル広告 | 5〜15ドル |
| 新聞広告 | 10〜25ドル |
| 雑誌広告 | 10〜20ドル |
| OOH(屋外広告) | 2〜7ドル |
OOH広告のCPMは、主要メディアの中で最も安い。
看板広告は、1000人に届けるコストが最も低いメディアなのだ。
なぜコスパが良いのか
理由はシンプルだ。
看板は、一度設置したら動かない。
毎日、同じ場所で、同じ人に届く。
交通量1万台の道路に設置すれば、月間30万回の露出。
月額3万円なら、1回の露出あたり0.1円。
テレビCMは15秒で数百万円。
デジタル広告はクリックごとに課金。
看板は、見られるたびにコストが下がる。
矛盾: 効果が高いのに、過小投資されている
ここで矛盾がある。
CPMで見れば、看板広告は最もコスパが良い。
なのに、広告費全体に占めるOOHの割合は、日本では約5%程度。
テレビやデジタルに比べて、明らかに投資されていない。
なぜか。
「効いている」実感がない
答えは、効果測定の難しさにある。
デジタル広告は、クリック数が分かる。
テレビCMは、視聴率が分かる。
では、看板広告は?
「何人が見たか」は、交通量から推定できる。
でも「見て、どうなったか」は分からない。
来店につながったのか。
購買につながったのか。
数字で証明できない。
効果測定の進化
この課題に、業界は動き始めている。
2025年、日本でJOAA(Japan Out of Home Advertising Association)が設立された。
OOH広告の効果測定を標準化する試みだ。
GPS データやスマホの位置情報を使って、看板を見た人の行動を追跡する。
「この看板の前を通った人が、その後、店に行ったか」を測る技術。
効果が「見える化」されれば、投資は増えるかもしれない。
でも、本当の問題は別にある
効果測定が難しいのは事実だ。
でも、もっと本質的な問題がある。
前回の話を思い出してほしい。
看板を見て「この店に行こう」と思う人は少ない。
広告として「買わせる」機能は弱い。
だとしたら、何を測ればいいのか。
「来店」を測っても、看板の効果は見えないかもしれない。
看板がしているのは、別のことかもしれない。
ここまでの気づき
1. 看板広告は、CPMで見ると最もコスパが良い 1000人に届けるコストが、主要メディアで最安。
2. でも「効いている」実感がないから、投資されない 効果測定の難しさが、過小投資を招いている。
3. そもそも「何を測るか」が問題かもしれない 「来店」以外の効果があるなら、測り方を変える必要がある。
次回
看板を意識的に見ている人は少ない。
でも「あの看板」と言えば、みんな分かる。
「見ていない」のに「覚えている」。
この不思議な現象を、次回は掘り下げる。
次回: 「見ていない」のに「覚えている」 ─ 無意識と広告の関係