あの頃に戻りたい
空海なら、こう問いかけるかもしれない。「追いかけているのは、本当に存在するものだろうか」
20代の自分に嫉妬する
SNSで、若い社員が活躍している記事を見る。
「20代でこんな成果を出すなんて、すごいな」
素直に思う。
でも、次の瞬間、別の感情が湧いてくる。
「俺が20代のとき、なぜこれをやらなかったんだろう」
同窓会で、昔の友人に会う。
「あいつ、起業して成功してるらしいよ」
「あの子、海外で働いてるんだって」
へえ、すごいね。
でも、心のどこかで思っている。
「あのとき、俺も挑戦していれば」
もっと早く○○していれば
「もっと早く転職していれば」
「20代で英語をやっておけば」
「あのとき結婚していれば」
「あのとき離婚していれば」
「もっと勉強しておけば」
「もっと遊んでおけば」
後悔のリストは、いくらでも増える。
30代後半から40代は、後悔の季節だ。
振り返ると、分岐点が見える。 あのとき、別の選択をしていれば。 あのとき、もう少し勇気があれば。
過ぎた時間は取り戻せない。 それが分かっているから、余計に苦しい。
「別の選択をした自分」は、どこにいる?
ちょっと考えてみてほしい。
「あのとき転職していた自分」
その自分は、今どこにいる?
いない。
どこにも、いない。
それは、あなたの頭の中にだけ存在する「幻の自分」だ。
「転職していた自分」は、想像上の存在。 「起業していた自分」も、想像上の存在。 「結婚していた自分」も、想像上の存在。
実在するのは、「今のあなた」だけだ。
後悔とは何か。
実在する自分を否定して、存在しない幻を追いかけること。
幻を追いかけて、何になる?
空海の時間の見方
空海は、時間について独特の考えを持っていた。
私たちは時間を「直線」だと思っている。
過去 → 現在 → 未来。
一方向に流れて、二度と戻らない。
でも、空海の見方は違う。
「過去は、今の中にある」
あなたが20代で経験したこと。 30代で悩んだこと。 失敗も、成功も、後悔も。
それは「過ぎ去った」わけじゃない。
今のあなたの中に、全部ある。
20代の経験が、今のあなたの判断力を作った。 30代の失敗が、今のあなたの慎重さを育てた。 後悔した瞬間が、今のあなたの深さを生んだ。
「取り戻す」必要はない。
あなたは、すでに「持っている」。
深さか、長さか
空海は24歳で山に入り、31歳で唐に渡った。
唐ではわずか2年で密教の全てを学び、日本に戻った。
たった2年。
でも、その2年間の「深さ」が、1200年の歴史を作った。
空海は言った。
「一念に億劫を過ぐ」
一瞬の中に、無限の時間がある。
時間の「長さ」じゃない。 時間の「深さ」だ。
20年間、浅く生きるより、 1年間、深く生きる方が、価値がある。
「20代に戻りたい」
その気持ちは分かる。
でも、戻ってどうする?
また浅く生きるのか?
それより、今を深く生きた方がいい。
今日を深く生きれば、過去の全てが意味を持つ。
後悔が湧いてきたら
後悔が湧いてくることは、止められない。
でも、湧いてきたときにできることがある。
気づくこと。
「ああ、今、後悔してるな」
それだけでいい。
押し殺す必要はない。 追い払う必要もない。
ただ、気づく。
「今、自分は『幻の自分』を追いかけているな」
その瞬間、あなたは「今」に戻っている。
後悔は「過去」にいる。 でも、後悔に気づいている「あなた」は「今」にいる。
気づいた瞬間、あなたは今を生きている。
空海なら、こう問いかけるかもしれない
「追いかけているのは、本当に存在するものだろうか」
「転職していた自分」は存在しない。 「起業していた自分」も存在しない。 「結婚していた自分」も存在しない。
実在するのは、今のあなただけだ。
もし、幻を追いかけるのをやめたら。 今を深く生きてみたら。
過去の全ては、どう見えるようになるだろう。
次回は「将来が怖い」という不安について。
(第3回へ続く)