AI時代のPMO:手戻り率を測って止める
AI時代のPMO:手戻り率を測って止める
いま起きていること
AIが仕事を安くするほど、PMOが数えるものが変わる。 パンダオフィスの記録から、3つの事実を挙げる。
- 2026年8月の手戻り率:ある受託案件で、作業の手戻り率を月ごとに数えていた。6月が10%、7月が13%、8月が169%だった。直す作業が、新しく作る作業より多くなっていた。原因は、ブランチの保護設定が緩んで検証の済んでいない変更が入ったことと、自動テストが不安定だったことの2つだった。同じ時期に、バックアップが取れているかを確かめていなかったことも見つかった。自動実行の記録は「成功」だったが、中身は空振りだった。
- 2026年8月9日から:やることリストを、各案件の状況ファイル(status.md)から自動で作るようにした。常駐プロセスが毎時55分に実行し、AIを呼ばないので費用はかからない。出力ファイルは毎回上書きされ、直すときは元の状況ファイルを編集する。
- 2026年9月1日〜7日:リポジトリを棚卸しした。全135本のうち、アーカイブされていないものは66本で、未完了の課題は635件あった。9月7日には、休眠リポジトリ7本をアーカイブし、雛形だけ作って一度も使わなかった案件フォルダ8件を畳んだ。
外の動きでは、EUが2026年7月にAI規則を改正し、高リスクのAIに対する義務を延期した。単体のシステム(Annex III)は2027年12月2日、製品に組み込まれるもの(Annex I)は2028年8月2日になった。日程は動く。
(出典:自社の案件記録 2026-08/git 履歴 2026-08-09/自社のリポジトリ棚卸し記録 2026-09-01/EU Regulation (EU) 2026/1744)
PMの仕事で何が変わるか
PMOの仕事は、標準の策定、状況の集約と報告、人の育成だった。このうち、状況の集約と報告は、AIと自動化で安くなった。やることリストは、人が書かなくても毎時更新される。
安くなったものは増える。レビューは周回し、リポジトリは増え、課題は積もる。PMOに残る仕事は、報告を作ることではなく、増えすぎないよう数えて、止めることになる。
数えるものは、案件の中にある。8月の手戻り率は、数えていなければ「忙しかった月」で終わっていた。成功と表示されたバックアップが空振りだったことは、成功という表示を、中身で確かめる仕組みがなければ見つからなかった。
PMBOK-AIではこう扱う
AI時代のPMOが持つ機能は、3つに絞れた。
1. 数える。 手戻り率のように、AIの出番が増えると悪化しやすい指標を、月ごとに数える。数える対象は、直す作業と新しく作る作業の比、自動テストの失敗率、バックアップが実際に取れているか、である。成功という表示は、何かが起きたことを意味しない。中身まで確かめる。
2. 集約を、正本の1か所に寄せる。 やることリストは、各案件の状況ファイルを正本にして自動生成した。この仕組みで起きた失敗もある。9月14日、見出しの書式を変えたら、画面のタスク件数が正しく読めなくなった。台帳と画面で、状況ファイルの書式判定が別々に書かれていたためだ。9月16日に、判定を1か所にまとめ、台帳と画面で共有した。集約は、判定のルールまで1か所に寄せて初めて、正本になる。
3. 畳む。 棚卸しの基準は1つで、「最後に人が触ったのはいつか」である。AIは頼めばいくらでも新しい入れ物を作る。作るのが安いぶん、畳む判断は人がしないと誰もしない。
手戻り率を見て止めた対応は、保護設定の復元、送信前の検証、レビューを2巡で打ち切る規則だった。止める条件は、数えた数字から決まる。
規制の日程は、PMOが台帳に持つ。EUの高リスク義務の期限は2027年12月2日と2028年8月2日に動いたが、いつ動くかは事前には分からない。日程を一覧にして、変更があったら更新する担当を決めておく。
明日からやること
- AIを多く使っている案件の手戻り率(直す作業÷新しく作る作業)を、月ごとに数え始める
- 自動実行の「成功」が、中身を伴っているかを確認する(バックアップなら、復元できるかまで)
- やることリストや台帳の正本を1か所に決め、書式の判定が複数の場所に散らばっていないか確認する
- リポジトリと案件フォルダを、最後に人が触った日で並べ、触っていないものを畳む候補にする
- 規制の日程を一覧にし、更新担当を決める
まとめ
AIが報告を安く作る時代のPMOは、数えて、寄せて、畳んで、止める役になる。止める条件は、数えた数字から決まる。
