削減した時間より、止まっていた時間を測る
削減した時間より、止まっていた時間を測る
作業は半分になった。納期は変わらなかった
資料作成にAIを使い、1件あたり2時間かかっていた作業が1時間になった。数字としては悪くない。
ところが、その資料が相手に届くまでの日数は、前とほとんど変わらなかった。
こういうことが起きる。しかも、珍しくない。
理由は単純で、その業務にかかっている時間の大半が、作業ではなかったからだ。
一件が終わるまでの時間を、分解してみる
ある書類が起票されてから相手に届くまでを、実際に分解するとこうなることが多い。
- 担当者が書く … 1時間
- 上長の承認を待つ … 2日
- 指摘を受けて直す … 30分
- 再提出して、また待つ … 1日
- 先方に送る … 5分
合計すると3日と1時間半。このうち、人が手を動かしているのは1時間35分しかない。残りはすべて、誰かが動くのを待っている時間だ。
ここでAIを使って「書く1時間」を30分に縮めたとする。全体は3日と1時間になる。3日が3日のままだ。
数字上は50%の削減だが、待っている人には何も変わって見えない。報告書の削減率と現場の実感がずれる、よくある形がこれだ。
待ち時間は、なぜ見えないのか
作業時間は測りやすい。始めて、終わる。本人が意識している。
待ち時間は逆だ。誰も作業していないので、誰の担当でもない。
承認待ちの2日間、担当者は別の仕事をしている。上長も自分の仕事をしている。この2日は誰の稼働にも計上されない。だから業務改善の議題にも上がらない。
結果として、みんなが「自分の作業を速くする」方向にだけ努力する。ところが全体の日数を決めているのは、誰も見ていない待ち時間のほうだ。
リードタイムで測ると、何が変わるか
対処は測る単位を変えることだ。作業時間ではなく、起点から終点までの経過時間、つまりリードタイムで測る。
やり方は難しくない。前々回に触れた「勝手に残る記録」がそのまま使える。
- 起票された時刻
- 承認された時刻
- 差し戻された時刻
- 完了した時刻
この4つが取れれば、どの区間で何日止まっているかが出る。新しく記録を作る必要はなく、多くの場合すでにシステムの中にある。
そして、区間ごとの日数を並べると、たいてい特定の1〜2区間が全体の大半を占めている。そこがボトルネックだ。
AIを、どこに置くかが変わる
リードタイムで見ると、AIの使いどころの評価が変わってくる。
さきほどの例なら、書く時間を縮めても効果は薄い。効くのは、承認の2日を短くすることだ。
たとえば、
- 提出前に不備を機械的に確認して、差し戻しの往復そのものを減らす
- 承認者が見るべき論点だけを要約して、判断にかかる時間を減らす
- 止まっている案件を検知して、放置されている状態を可視化する
いずれも「書く速さ」ではなく、待ち時間に効く使い方だ。同じAIでも、置く場所で効果が一桁変わる。
前回の話ともつながっている。止まっている案件は完了しないので、完了ベースの集計からは抜ける。測っていないから見えず、見えないから直せないという循環がここにもある。
まとめ:3つの洞察
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作業時間を半分にしても、納期は変わらないことがある
- 多くの業務で、時間の大半は待ち時間。作業だけを縮めても全体は動かない
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待ち時間は、誰の担当でもないから見えない
- 承認待ちの2日は誰の稼働にも計上されない。だから改善の議題に上がらず、放置される
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リードタイムで測ると、AIの置き場所が変わる
- 起票・承認・差し戻し・完了の時刻があれば区間ごとの滞留が出る。効くのは作業の速さではなく、止まっている区間
次回予告
ここまでの話には、共通する前提がある。測るための材料が、始める前に用意されているという前提だ。
導入前の記録がなければ前後比較はできないし、時刻が残っていなければリードタイムも出せない。最終回は、効果測定を後から足すのではなく、導入の設計に埋め込む話をする。
💬 あなたの職場でいちばん長く止まっている工程は、どこだと思いますか?コメントで教えてください。
