AI社員の事務所をサイトで生中継する|見せるのは仕事の種類だけ、15分遅らせて出す
この記事の要点
2026年10月12日、サイトのトップを作り替え、AI社員が実際にしている仕事を事務所の見取り図の上に流し始めた。資料を読んでもらうより、動いている様子を見てもらうほうが早いと考えたためだ。流しているのは、誰が・どの種類の仕事を・始めたか終えたか人の承認を待っているか、だけである。記録の表には文章の列を作らず、件名・取引先名・金額・人名が入る経路を表の形で塞いだ。表示は15分遅らせ、承認する人がいつ画面の前にいるかを読ませない。仕事が少ない時間は今日の記録を早回しで再生し、画面に録画と出す。つないでみると、見取り図はほとんど動かなかった。定期で回していると思っていた仕事の多くが、つながっていなかったからだ。見せると決めたことで、見せないものと、見えていなかったものの両方がはっきりした。
AI社員が働く様子を、サイトで生中継することにした。最初に決めたのは、何を見せないかだった。
2026年10月12日、Panda Office のサイトのトップを作り替えた。1画面目は事務所の見取り図で、AI社員が実際の仕事に合わせて部屋を歩き、作業する。朝のブリーフィングを届ける、届いたメールを確認する、クラウドの費用を確かめる、ニュースを集めて並べる。こうした仕事が、実際に動いた時刻の15分後に画面に出る。
この記事では、生中継をどう作ったかを、見せないものの決め方を中心に記録する。
なぜ見せるのか
Panda Office は、自社をAI社員で回す実験をしている。その様子を説明する資料はいくつも作ってきた。ただ、中小企業の経営者に「AI社員が働いている」と文章で伝えても、何が起きているのかは想像しにくい。
そこで、資料ではなく動いている様子そのものを見せることにした。サイトのゴールは、30分の無料オンライン見学の予約である。見取り図で興味を持ってもらい、見学で中身を見てもらう。
流すのは4つの値だけ
AI社員の仕事は、手元のPCで常駐しているプログラムが動かしている。仕事を始めたとき、終えたとき、人の承認を待つときに、プログラムがデータベースに1行を書き込む。サイトはそれを読んで見取り図を動かす。
書き込む表は、次の4つの値しか持たない。
| 値 | 中身 |
|---|---|
| 時刻 | 起きた時刻 |
| 担当 | 5人のAI社員のうち誰か |
| 区分 | 仕事の種類を表す短いコード(例:メールの確認、費用の確認) |
| 段階 | 開始・完了・承認待ち・承認済みのどれか |
文章を書き込む列は作らなかった。 メールの件名や取引先名、金額、人の名前は、文章の列があればいつか紛れ込む。入る場所がなければ紛れ込みようがない。画面に出す「届いたメールを確認」といった文言は、サイト側に置いた対応表が区分コードから組み立てる。知らない区分コードが届いたら、表示せずに捨てる。
区分は、許可した一覧の中からしか書き込めないようにデータベース側で制限している。いまは32種類ある。
「承認待ち」は、本当に人の判断を待っている件数である。AI社員が下書きを作り、承認の関門で止まったときだけ「承認待ち」を書き込み、人が承認ボタンを押した時点で「承認済み」を書き込む。
15分遅らせて出す
画面に出すのは、15分以上前の出来事だけにした。
承認が押された時刻がそのまま見えると、承認する人がいつ画面の前にいるかが分かる。誰かがそれを知って得をする場面は思いつかないが、知られて困らない理由もない。15分遅らせれば、生中継らしさはほとんど失わずに、その手がかりを消せる。
ほかにも、守りのための決まりをいくつか置いた。
- 書き込みの鍵は1台のPCにだけ置き、書けるのは追加だけにした。 読み取り・書き換え・削除はできない。鍵が漏れても、起きるのは「偽の動きが画面に出る」ところまでである
- ブラウザからデータベースに直接つながない。 サイトのサーバーが30秒ごとにまとめて読み、その結果を配る。データベースは他のアプリと共有しているので、アクセスが集中してもデータベースまで届かせない
- 書き込みに失敗しても、本来の仕事は止めない。 生中継は見せるための仕組みで、仕事のほうが優先である
ライブと偽らない
AI社員の仕事は、一日中均等にあるわけではない。夜や休日は、見取り図がほとんど動かない時間が続く。静かな画面を見せるか、何か動いているものを見せるか。ここでは、動かすけれど偽らない、という形にした。
| 見せ方 | いつ | 画面の表示 |
|---|---|---|
| ライブ | 直近1時間に3件以上の出来事がある | 「ライブ 15分遅れの実際の動き」 |
| 録画 | 今日の記録はあるが、直近は静か | 「録画 今日の記録をN倍速で再生」 |
| 表示例 | 今日の記録がない、または読めない | 「ライブ 表示例のデータで動いています」 |
録画は、その日の記録をおよそ4分で見られる速さで再生し、何倍速かを画面に出す。表示例のデータで動かすときも、そう書く。見る人が、いま見ているものが本物かどうかを判断できるようにする。
つないでみたら、ほとんど動かなかった
最初につないだのは、朝夕のブリーフィング、毎時のやることリストの作成、AIニュースの出稿の3つだった。公開してみると、見取り図はほとんど動かなかった。動いていたのは、ほぼやることリストだけだった。
毎日たくさんの仕事をAI社員に任せているつもりでいた。ところが、定期で回っている仕事を一つずつ見ていくと、まだ生中継につないでいないものがほとんどだった。別のPCで動いているプログラムの仕事は、まるごと抜けていた。
同じ日に、メールの確認、費用の確認、ニュースの並べ替え、見学予約の4つを足した。その後、別のPCの仕事を区分ごとに足していき、区分は32種類になった。
見学予約も、サイトの中で完結させる
見取り図の先にある見学予約も、同じ考え方で作った。
- 見学の枠は、火曜と木曜の午後だけに出す。受けるのは1週間に2件まで、開始の24時間前で締め切る
- 申し込んだ時点で確定とし、数分後に画面にオンライン会議のURLとQRコードを出す
- 確認メールは送らず、申し込んだ人を予定の出席者にも入れない
最後の決まりには理由がある。申し込みのときに本人確認をしていないので、他人のメールアドレスで申し込むことができてしまう。その人を予定の出席者に入れると、こちらのカレンダーから見知らぬ人に招待が届く。メールアドレスは連絡用に控えるだけにして、予約が入るたびに社内のチャットに流し、心当たりのない予約は人が消す。
同じメールアドレスや同じ接続元からの申し込みは、1日の回数も絞っている。いたずらが続いたら、外部の仕組みを足すかどうかを改めて決める。
見せると決めると、見せないものが決まる
社内で使っている仕組みを外に見せると決めると、まず「何を見せないか」を決めることになる。今回は、文章を持たない、遅らせる、偽らない、の3つに落ち着いた。
そして、見せようとしたことで、自分たちにも見えていなかったものが分かった。任せているつもりの仕事のうち、どれが本当に定期で回っているのか。画面に出してみるまで、気づかなかった。
見取り図はサイトのトップで動いている。中身をもっと詳しく見たい方は、オンライン見学(30分・無料)で、実際の画面を見ながら説明する。
(出典:自社の設計書と実装の記録 2026-10-12〜2026-10-16。区分の数は2026-10-16時点)
