PMBOK-AIを1年分の実体験で書き直した|構想の24本を、事故から残ったルールへ
この記事の要点
PMBOK-AIは、AIがチームの一員になる時代のプロジェクトマネジメントを考える自社の方法論である。最初の連載と書籍は構想として書いたもので、筆者の実体験は書籍の2つの章に4か所しか出てこなかった。AIを仕事の中心に置いて1年がたち、構想どおりに行ったことと外れたことが記録に残った。そこで2026年10月、連載24本と書籍を書き直した。社内の記録から1年を5つの時代に分け、7つの原則をそれぞれ生んだ事故と並べて示した。7つのうち4つは2026年8月の事故から来ている。書き直しの途中で、自分たちの数字の誤りも見つかった。書籍に載せていた利用量は1台分の集計で、3台を合わせると約1.3倍だった。案内ページにあった出典のない効果の数字は消した。
PMBOK-AIの連載24本と書籍を、1年分の実体験で書き直した。 2026年10月15日のことだ。
PMBOK-AIは、AIがチームの一員になる時代のプロジェクトマネジメントを考える、Panda Office の方法論である。最初の版は2026年2月に公開を始めた。この記事では、なぜ書き直したのか、何を材料にしたのか、書き直して何が変わったのかを記録する。
最初の版は、構想だった
最初の版は「AIがチームメイトになる日」を描いた構想として書いた。各章にはプロジェクトの事例を載せていたが、多くは説明のために作った架空の事例で、筆者自身の経験は書籍の2つの章に4か所しか出てこなかった。
それから1年近く、AIを仕事の中心に置いて働いた。受託開発、自社サイト、社内の業務、そしてこの本の執筆も、AIと組んで進めた。うまくいったこともあれば、事故もあった。その記録が社内に残っている。
構想として書いた方法論を、記録が残った後もそのままにしておく理由はない。書き直すことにした。
材料は、社内の記録だけ
書き直しの材料は、社内に残っている記録に絞った。
- コードと文書の変更履歴(いつ、何を、なぜ変えたか)
- AIの利用量の記録(2025年12月27日から日ごと)
- 案件ごとの状況メモ
- 事故の振り返りと、そこから作ったルール
- ルールを廃止したときの記録
これらを並べて、1年を5つの時代に分けた。
| 時代 | 期間 | 何が変わったか |
|---|---|---|
| 全部AIと組む | 2025年10月〜2026年2月 | 「ときどき使う」から「測りながら全部AIと組む」へ |
| 並列のチーム | 2026年3月〜4月 | 1本の長い対話から、並列で動くチームへ |
| AIが常駐する | 2026年5月〜7月 | 人がAIに頼む形から、AIが常駐して朝に報告する形へ |
| 絞る・測る・止める | 2026年8月〜9月 | 足し続ける時期から、絞って測って止める時期へ |
| 見せて売る | 2026年9月〜10月 | 社内の道具から、外に見せる仕組みへ |
この5つの時代は、新しく作った1年史のシリーズで1本ずつ書いた。
7つの原則を、事故と並べた
PMBOK-AIには7つの原則がある。原則そのものは最初の版から変えていない。変えたのは示し方である。最初の版では、原則を考え方として説明した。改訂版では、それぞれの原則を、それを必要にした事故と並べて示した。
| 原則 | 一言で | それを生んだ事故 |
|---|---|---|
| 1. 共進化 | 人とAIが、互いのフィードバックで成長する | 新旧のルールが正反対のまま、両方読み込まれていた(2026年8月) |
| 2. Human-in-Command | 最終決定権と責任は、人が持つ | 退避前のデータを、一括削除に混ぜて消した(2026年8月) |
| 3. 目的志向 | 管理するのは、手段ではなく目的 | 1本のスクリプトのレビューが19周した(2026年8月) |
| 4. 動的価値 | 価値は、公開後も測り続ける | 手戻りの割合が6月の10%から8月の169%になった(2026年8月) |
| 5. 透明な認知 | AIの出力は、根拠と一緒に受け取る | 渡した確定データをAIが書き換えた(2026年6月) |
| 6. システム責任 | 個人ではなく、仕組みを直す | 1つのアプリの設定ミスで、同居する別のアプリが約20分止まった(2026年7月) |
| 7. オーケストレーション | 異なる知性を組み合わせる | 並列で進めたら文書が実装に追いつかず、同じものを二重に作った |
(出典:自社の運用記録・事故記録 2026-02〜2026-10)
7つのうち4つが2026年8月の事故から来ている。8月に事故が集中したというより、8月は半年間足し続けた仕組みを絞って測り始めた月で、事故を最も丁寧に記録した月だった。見つけ方が変わった、と読んでいる。これは推測である。
自分たちの数字も、間違っていた
書き直しの途中で、自分たちが載せていた数字の誤りが見つかった。
最初の版の書籍には「約80日で901,528メッセージ」というAIの利用量を載せていた。記録を集め直すと、これは1台のPCの分だけを数えたものだった。仕事に使っているPCは3台ある。3台を合わせると、同じ期間で1,174,165メッセージになる。
(出典:自社のAI利用統計 2025-12-27〜2026-03-16(3台合算))
書籍の中でも、期間は74日・77日・80日、件数は88万・90万・901,528と、章ごとに表記が揺れていた。改訂版では3台合算の値にそろえた。
案内ページにあった効果の数字も見直した。「定型業務の90%自動化」「レビュー時間を80%削減」「文書作成の工数を90%削減」といった数字には、示せる出典がなかった。測った記録がない数字は消し、出典のある1年分の記録に置き換えた。
AIで書き直したから、AIの記録をうのみにしない
この書き直しも、AIと組んで進めた。社内の記録を読んで時代ごとに出来事を拾い、下書きを作るところまでをAIが担当した。
ここで一つ決まりを置いた。社内の記録の中には、AIが作業の後に自分で書いたメモが含まれている。そこから拾った日付や数字には印を付け、人が一次資料と照らして確かめるまで本文に使わない。AIのメモは、その時点のAIの理解であって、一次資料ではないからだ。この決まりは、原則5「透明な認知」をこの本自身に当てはめたものでもある。
公開する文章には、取引先の名前、人の名前、システムの名前を出さない。事例は業種と規模で書いた。
構想と実際で、違ったこと
書き直してみると、構想の段階で書いたことのうち、いくつかは外れていた。
- 24時間動けるAIは、人の総労働量を減らさなかった。 AIは夜も動くが、出力を見て判断する人は休めなくなった。1人で回せる量は増えたが、総労働量は減らなかった
- ざっくり指示すると、テストは通るのに仕様と違う実装が量産された。 任せる量を増やすほど、指示の粗さがそのまま間違いの量になる
- 任せる範囲を広げる前に、止め方を決める必要があった。 改訂版では、削除・本番環境の変更・外部への送信・費用の発生の4つを、人に残す操作として明記した
一方で、人とAIの分担の線引きや、品質を確かめる関門を置くという考え方は、1年たっても通用した。構想のすべてが外れたわけではない。外れた部分が、記録から具体的に分かるようになった。
書き直したもの
- Web連載24本:URLは変えずに、各記事を「実例・事故・そこから生まれたルール」を軸に書き直した
- 1年史のシリーズ5本:5つの時代を1本ずつ新しく書いた
- 書籍:17章の改訂版を下書きした。確定はこれからで、確定した後に動画も作り直す
全体の入口はPMBOK-AIの案内ページにまとめている。最初の版を読んだ方には、2026年2月の導入事例と、その後の答え合わせも合わせて読んでほしい。
