集計から未完了を外すのをやめる
7項目のうち、どれから直すか。答えは決まっています。
いつも見ている集計から、未完了と中止を外すのをやめてください。
半日でできます。稟議も予算も要りません。
なぜ、これが最初なのか
効果が大きいからではありません。理由は3つです。
1. その日にできる。 集計方法を変えるだけで、システム改修も予算も権限も要りません。
2. 断りにくい。 出てくるのが「ツールを買ってください」ではなく、 **「現在の管理指標が、実態より良く出ています」**という指摘になります。
3. 足場になる。 数字で語れるようになると、以降の提案が通りやすくなります。 現場が問題を認識していても上に通らない原因の一つは、 「良くなった気がする」以上の言葉を持っていないことにあります。
何が起きているのか
案件が6件あるとします。
- A 完了 12日/B 完了 16日/C 完了 20日
- D 進行中 36日〜/E 進行中 42日〜
- F 31日で中止
いまの集計は、完了した3件だけで平均を出します。→ 16日
未完了と中止を母集団に残すと、打ち切り時点まで含めた下限で 26日以上。 D と E はまだ終わっていないので、26日は下限です。実際にはさらに伸びます。
同じ業務の同じ期間で、見える数字が1.6倍以上変わります。
実データでどうだったか
通信インフラの案件データ(5万件超)を解析したところ、 完了案件のみの集計は実態より 24%良く出ていました。 詰まる工程では 51% です。
この数字は当該データセット固有のもので、他社には当てはまりません。 一般化できるのは数字ではなく、構造のほうです。
副産物もありました。 「遅い工程」だと思われていた工程が、実は約20%が永久に通らない関門だった、という発見です。 平均だけを見ていると、これは絶対に出てきません。
1つだけ注意
中止は「まだ終わっていない」ではありません。
進行中(右打ち切り)と中止を同じ扱いにすると、また別の誤りが入ります。 中止は別の結末なので、統計的には競合リスクとして扱うのが正しい方法です。
とはいえ、最初の一手としては「外すのをやめて、件数と内訳を出す」だけで十分です。 そこで違和感が出れば、次の分析に進む理由ができます。
通らない条件が3つある
「断りにくい」と書きましたが、常にそうなるわけではありません。
- その指標を作ったのが、意思決定者本人である場合 → 指摘がその人への否定として受け取られる
- 母集団が他部署の管理下にある場合 → 全件アクセスが要る。自部署で完結しないなら承認が要る
- その指標が人事評価に連動している場合 → 数字が悪くなる方向の修正は政治的な争点になる
いずれかに当たるなら、既存の指標を置き換えず、隣に並べます。 差分を見せるだけなら、誰の否定にもなりません。
Step 1 の全体
集計を直したら、続けて2つあります。どれも承認は要りません。
- 色・書式で表していた判断に、列を1本足す(1〜2日)
- 空欄コードを4つ決める(1日+運用。ここだけ現場合意が要る)
この3つで L1 に届きます。L1 に届けば、集計・要約・下書きは任せられるようになります。
持ち帰り
今週、1つだけ。
いつも見ているその数字は、何件で計算していますか。
分母を数えるところから始めてください。
詳しくは:『AIレディ』第9章・第6章5節
出典
- 通信インフラ案件の実データ解析(5万件超)。守秘のため業種・規模の粒度に留める。24%は当該データセット固有の値
- 右打ち切り・競合リスク:生存時間分析の標準的な手法