#24分

なぜ夜になると、不安が膨らむのか

不安前頭前野ネガティビティバイアス心理エッセイ生き方
なぜ夜になると、不安が膨らむのか

なぜ夜になると、不安が膨らむのか

昼間は、平気だった。

仕事も、それなりに片づいた。


なのに、夜。

布団に入った瞬間、それはやってくる。


あのメールの返事、まずかったかもしれない。

あの一言、嫌われたかもしれない。

将来、どうなるんだろう。


昼はあんなに小さかった悩みが、夜には巨大に膨らんでいる。


同じ悩み、同じ自分。

なのに、なぜ夜だけこんなに苦しいのだろう。


昼と夜で、脳の状態が違う

答えは、脳の「疲れ」にある。


脳には、冷静に判断する部分がある。

前頭前野(ぜんとうぜんや)と呼ばれる、額のあたりだ。


ここが、暴れる感情にブレーキをかけている。

「大丈夫、落ち着け」となだめる係だ。


でも、この係は、一日中働いて疲れている。


夜になるころには、もうへとへとだ。

ブレーキが、効きにくくなる。


一方、危険を知らせる見張り番――扁桃体は、疲れを知らない。


なだめ役が疲れて、見張り番は元気。

このバランスが崩れる時間帯が、夜なのだ。


情報が、少なすぎる

夜が苦しい理由は、もうひとつある。


昼は、忙しい。

人と話す。仕事が来る。景色が動く。


たくさんの情報が、次々と入ってくる。

だから、ひとつの悩みに、ずっと留まっていられない。


でも、夜は静かだ。

暗くて、静かで、何もない。


入ってくる情報が、極端に少ない。


すると、脳は暇を持て余す。

そして、内側へ向かう。


考えることが、それしかない。

だから、同じ悩みをぐるぐると、何度も回してしまう。


心は、悪いほうに傾く

そしてもうひとつ、人間には厄介なクセがある。


同じ出来事でも、心は悪いほうを重く見る。

これを、ネガティビティバイアスと呼ぶ。


褒め言葉が九つあっても。

けなす言葉が一つあれば。


心に残るのは、たいてい、その一つのほうだ。


これも、生き延びるためのクセだった。

「良いこと」を見逃しても、命は取られない。

でも「危険」を見逃したら、命に関わる。


だから脳は、悪い情報に、より強く反応するようにできている。


疲れて、暇で、悪いほうに傾く。

夜の脳は、不安を膨らませる条件が、すべて揃っている。


だから、夜は決めない

ここから、ひとつの知恵が生まれる。


大事なことを、夜に決めない。


夜に見えている自分は、本当の姿ではない。

疲れた脳が描いた、暗い絵にすぎない。


同じ悩みを、朝もう一度ながめてみる。


驚くほど、小さく見えることがある。

「なぜあんなに悩んでいたんだろう」と。


悩みが変わったのではない。

脳の、コンディションが変わっただけだ。


ここまでの気づき

  • 夜が苦しいのは、感情にブレーキをかける前頭前野が一日の疲れで弱り、疲れ知らずの見張り番だけが元気に働くから
  • 夜は入ってくる情報が少なく、脳は同じ悩みを内側でぐるぐる回してしまう。忙しい昼は、それができない
  • 人の心は良いことより悪いことを重く見る(ネガティビティバイアス)。疲れ・暇・偏りが揃う夜は、大事なことを決めないほうがいい

明日へ

夜に膨らむ不安の多くは、まだ起きていないことへの心配だ。


心配したことの、ほとんどは、実際には起こらない。

それでも、なぜ人は「まだ起きていないこと」に、これほど怯えるのだろう。

明日は、その話をしてみたい。