#44分

不安を消そうとするほど、増える

不安思考抑制シロクマ逆説心理エッセイ生き方
不安を消そうとするほど、増える

不安を消そうとするほど、増える

考えないようにしよう。

そう決めるほど、頭から離れない。


忘れよう、忘れよう。

そう思うほど、鮮明に浮かんでくる。


不安に、こんな厄介な性質があることに、気づいているだろうか。


シロクマのことを、考えるな

ひとつ、試してみてほしい。


これから一分間、シロクマのことだけは、考えないでください。


何を思い浮かべてもいい。

ただ、シロクマだけは、絶対にダメ。


……どうだろう。


たぶん、頭の中は、シロクマでいっぱいになる。

白くて、大きくて、のっそりした、あのシロクマで。


これは、心理学で有名な話だ。

ウェグナーという研究者が、実際に実験している。


「考えるな」と言われたことほど、人は考えてしまう。

そういうクセが、脳にはある。


なぜ、逆に増えるのか

理由は、考えてみれば単純だ。


「シロクマを考えないようにしよう」


その文の中に、すでにシロクマがいる。


考えないためには、まず「何を考えないか」を確認しなければならない。

つまり、考えないために、考えてしまう。


不安も、まったく同じだ。


「不安になるのはやめよう」

そう思った瞬間、不安を呼び出している。


消そうとする手が、かえって、それを握りしめている。


押さえるほど、跳ね返る

水に浮くボールを、想像してみる。


沈めようと、上から押さえつける。


強く押すほど、ボールは強く跳ね返そうとする。


そして、手を離した瞬間。

勢いよく、水面に飛び出してくる。


抑えつけた分だけ、跳ね返りが大きい。


不安も、押さえつけると、力をためる。

そして、ふとした瞬間に、より大きく戻ってくる。


「消そう」とする戦い方は、ほとんどの場合、うまくいかない。

戦えば戦うほど、相手は強くなるのだから。


消すのではなく、置き場所を変える

では、どうすればいいのか。


答えは、拍子抜けするほど静かだ。


消そうとしない。

追い出そうとしない。


ただ、そこにあることを、認める。


「ああ、今、不安があるな」

そう、気づくだけでいい。


握りしめるのでも、押し込めるのでもなく。

隣に、置いておく。


不思議なもので、認めた不安は、少し静かになる。

戦う相手がいなくなると、暴れる理由も、なくなるらしい。


シロクマも、そうだ。

「いてもいい」と思った瞬間、いつのまにか、どこかへ行っている。


消そうとするから、居座る。

置いておくと、通り過ぎていく。


ここまでの気づき

  • 「考えるな」と言われたことほど、人は考えてしまう。ウェグナーのシロクマ実験が示すとおり、不安も「消そう」とするほど呼び戻される
  • 消すために、まず「何を消すか」を確認してしまう。抑えつけたボールが強く跳ね返るように、押さえた不安は力をためて大きく戻ってくる
  • 戦うのをやめて、「今、不安があるな」と認めて隣に置く。戦う相手がいなくなると、不安は暴れる理由を失い、通り過ぎていく

明日へ

不安は、消せない。

消せないなら、どう付き合っていくか。


このシリーズの最後に、不安と生きていくための、いくつかの小さな知恵を、静かに置いておきたい。